住宅リースバックがにわかに活気づいている訳 自宅をいったん売却して賃貸する資産活用法

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自宅を担保に生活資金を確保する動きはどこまで広がるか(写真:yukiotoko/PIXTA)

新型コロナウイルス感染症の流行が続き、収入減などで生活資金の確保に悩む人が今後、増える懸念が高まっている。そうした状況下で、自宅を売却してそのまま賃貸として住み続ける「リースバック」事業に参入する不動産会社が相次いでいる。

5月からケイアイスター不動産(本社・埼玉県本庄市)が、不動産担保ローンのセゾンファンデックス(本社・東京都豊島区)と提携して参入。今月からは、埼玉県エリアを中心に住宅分譲などを展開するポラスグループでも自社施工物件を対象に事業を開始した。

2013年からリースバック事業を展開する不動産流通フランチャイズチェーン(FC)のハウスドゥは、この分野の草分け的存在だが、2020年6月期第3四半期(1~3月)も反響数6000件弱、契約数176件で過去最高を記録。3年前に参入した中古マンション買い取り再販のインテリックスでも、センチュリー21などの不動産流通FCと連携して買い取り件数を増やしており、保有件数は今年2月末で前期末比約4割増の358件となった。

ケイアイスター不動産が参入したのは、同じ不動産流通FCのハウスドゥやセンチュリー21がリースバックで集客力を高め、FC加盟店獲得につなげているのに対抗するため。10年後に1000店舗獲得を目指して取り組みを強化していく考えだ。

国土交通省でも、2020年度から住宅局でリースバックの調査研究事業を開始し、それに基づいて不動産会社のほか弁護士や消費者団体を加えたラウンドテーブルを設置。ガイドライン策定など市場環境の整備に乗り出す。はたしてリースバックは、住宅・宅地資産を有効利用する新たな不動産商品として普及・拡大するのか。

リバースモーゲージは普及進まず

昨年6月、金融庁の審議会報告書案『高齢社会における資産形成・管理』が公表され、いわゆる「2000万円不足問題」がクローズアップされた。総務省が5年ごとに実施する全国消費実態調査(2014年)によると、家計資産に占める住宅・宅地資産の割合は66.6%を占めており、以前から住宅・宅地資産をいかに有効活用するかは課題となっていた。

日本では、1981年から東京・武蔵野市が自宅を担保に生活資金を融資する「リバースモーゲージ」の提供を開始。その後、民間金融機関からもリバースモーゲージを商品化したが、トップシェアの東京スター銀行でも、2005年からの累計利用件数が1万2000件にとどまっており、普及が進んでいない。

「本来、自宅を担保に生活資金を提供するのは金融機関がやるべきことで、不動産会社の仕事ではない。しかし、困っているお客さんがあまりに多いので取り組むことにした」。ハウスドゥの冨永正英常務取締役は、ハウスリースバック事業を始めたきっかけをそう話す。

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