「工事費高騰」マンション大規模修繕に深刻な影響 築40年超のマンションは現在103.3万戸もある
われわれさくら事務所が手がける現場においても、工事費の高騰の影響は顕著であった。
例えば、外壁の塗装やタイルの補修工事において、吹き付け塗装のマンションでの工事費は80万円程度からおおよそ100万円に跳ね上がった。また、タイル張りのマンションにおいては約100万円から約130万円に。金額はあくまで感覚値ではあるが、工事費の急上昇が止まらない状況にあったと記憶している。
想定外の新型コロナの影響
2013年の秋に東京オリンピックの開催が決まり、工事費の高騰が続く中、大規模修繕工事を延期したマンション管理組合も少なくない。2016、2017年頃までは「東京オリンピック後、マンションの大規模修繕工事費用は下落する」と考える向きも多かった。日本で初めてオリンピックが開催された1964年以降、深刻な景気後退の局面を迎えたことから、今回も同様になると予測したためだ。
一方で、国土交通省によると、1960年代半ばから分譲マンションは増え続け、2020年末時点でのマンションストック総数は約675.3万戸にのぼる。
築40年超のマンションは現在103.3万戸と、マンションストック総数の約15%にあたる。つまり大規模修繕を含むメンテナンスが必要なマンションは多数あり、工事のニーズは衰えないわけだ。
1回目の大規模修繕工事の見送りを検討したのが、2003~2007年頃に竣工したマンションだった。それらに加え、供給戸数の多かった2008~2010年竣工のマンションも大規模修繕工事の時期を迎えることとなる。
東京オリンピックなどで高騰した工事費のため、一時的に大規模修繕工事を控えたマンションの需要が噴き出せば、さらなる工事費の高騰につながるだろう。東京オリンピック直前の2018、2019年時点では、「工事費はこのまま高騰し続けるのではないか」との観測も広がっていた。
結果的に2020年、コロナ禍という予想外の状況下でオリンピックの延期が決まった。延期していた大規模修繕工事の実施に動きだそうとするマンション組合もあったものの、コロナ禍でストップを余儀なくされた。ここまでが2020年夏頃までの状況となる。
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