「工事費高騰」マンション大規模修繕に深刻な影響 築40年超のマンションは現在103.3万戸もある

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では、2022年以降、大規模修繕工事費がダウンすることはあるのだろうか。先ほども触れたが、ストックマンションの戸数はどんどん積み上がってきているのが現状だ。

国交省のデータによれば、1960年後半~1970年代(昭和30年後半~40年代)にかけては約44万戸、1970(昭和50)年代後半を加えると約140万戸となる。さらに1985~1994(昭和60~平成6)年までの10年間の分譲数を足すと約277万戸、1995~2004(平成7~16)年にはわずか10年で約170万戸のストック戸数増となっている。さらに2005~2020(平成17~令和2)年、つまり現在まで約210万戸がプラスされた。

さらなる需要の逼迫、工事費高騰は避けられない

またマンションの大規模修繕工事は1回目の実施が終わっても、周期的に行う必要がある。一度修繕をすればそれで終わりということではなく、おおよそ12~15年程度のサイクルで2回目、3回目を計画するのが一般的だ。ストックマンションがどんどん積み上がるにつれて、工事のニーズは膨らみ続けていくのだ。

大規模修繕工事の需要が増えているのに、携わる施工会社、必要な人材は相変わらず不足している。年々少子高齢化が進む中で、働き手の不足はどの業界においても悩みの種だ。ただ、建設業界において問題はより深刻だといえよう。

もともと「3K」のイメージが強く、若い世代から敬遠されがちであったうえ、工事の担い手である職人は高齢化の一途をたどっている。またリーマンショックなどの影響で資金繰りに窮し、廃業した会社や現場を離れた職人も少なくない。

今後も施工会社、および職人の減少は止まらず、慢性的な人手不足が続くと予想される。需要と供給のバランスが崩れ、施工費用は高止まりの状態が続くだろう。もしくは再度高騰することも考えられるのだ。

大規模修繕工事は、回数を重ねるごとに内容も変わり、負担も大きくなるものだ。1回目の工事は築十数年のときに行うため、ケースバイケースではあるが、建物や設備が大きく劣化することは少ない。しかし2回目、3回目と回を重ねるごとに建物は老朽化が進行し、修繕を検討するべき範囲も広くなる。その分コストもかさむのはある意味当然のことだとも言える。

国交省によれば、築40年超のマンションは現状の103.3万戸から10年後には約2.2倍の231.9万戸、 20年後には約3.9倍の404.6万戸となる見込みだという。日本中のマンションがどんどん老い「高齢化」し続けていく中、大規模修繕工事は不可欠なものだ。さらなる需要の逼迫、工事費高騰は避けられないだろう。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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