「GDPより長寿大国」日本が世界をリードできる訳 何歳でも輝ける「新資本主義」ライフシフト社会

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世界中の人々がスキル、生き甲斐、お金などの面で健全な生活を送る方法を理解できるように支援するという贈り物です。

高齢化社会を問題視してはいけない

アンドリュー・スコット(以下アンドリュー):日本ではこれから大きな人口減少が起こり、高齢化社会への移行が一気に進むでしょう。

シンガポールや中国、ベトナムも同様に高齢化の課題を抱えていますが、日本は若者に対して年配者の割合が非常に多い、とてもユニークな状況です。だから健康長寿に取り組むことが、より一層重要になってくるのです。

アンドリュー・スコット/英ロンドン・ビジネススクール経済学教授、米スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者。英国予算責任局アドバイザリーボードと英内閣府栄誉委員会のメンバー。邦訳著書に『LIFE SHIFT』『LIFE SHIFT2』(リンダ・グラットンとの共著)(撮影:今井康一)

10年後の日本はどのような社会になっているかという問いかけですが、今、私たちは社会の地殻変動のような大きな変化について話していますから、10年というのは短い。日本にとって重要なのは、早く動き出すことです。

また、私はマクロエコノミストなのでGDPがいかに重要かはよく知っています。GDPは資源を持っていることを意味します。富裕層だけでなく、より多くの人々がより長く、健康的な生活を送れるようにするには、多くの資源が必要となります。だからこそGDPは重要なのですが、それがすべてではありません。

日本はGDPだけに焦点を当てるのをやめるべきだと思います。たとえ長く働いたとしても、働く人が減っていくのですからGDPは減少してしまうでしょう。それを気にしすぎるべきではありません。

私たちが本当に注目すべきなのは、高齢者が増えたとき、彼らがどれだけ健康かということです。幸せかどうか、孤独になっていないかどうか、社会活動に参加できているかどうかなどが重要です。

そもそも高齢化社会を問題視することが良くないのです。高齢化社会は日本が生み出した最大の功績の1つです。それは幼児の死亡率が低いことを意味し、中年層の死亡率も低いことを意味します。むしろ、祖父母や曾祖父母が孫に会う機会が増えているのですから、素晴らしいことです。健康な平均寿命が何よりも重要だと思っています。

よりいっそう人間らしくあるべき理由

日本は平均寿命が最も長い国ですから、“健康に”長生きできることを確信でき、いろいろな活動に参加できることも必要でしょう。私たちが目指しているのはそこなのです。

『ライフ・シフト2』では、テクノロジーも1つの大きな要素として取り上げました。人口は減っていますが、機械やロボット、AIが増えていくのです。

ロボットが私たちをサポートしてくれるようになる一方で、私たちが機械に取って代わられないようにするにはどうしたらいいか。機械が機械としての能力を高めていくのであれば、私たちは仕事でも生活でも、よりいっそう人間らしくあるべきだと思います。

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