日本人はエネルギー問題の大潮流をわかってない 消費者としてどう行動するかが問われている
みなさんあまり意識されないかもしれませんが、最近は東京で「空気が悪い」と感じる機会が少なくなったと思います。2003年に東京都がディーゼル車を規制する条例を作る以前は、遠くの景色が赤茶色に見えることもありました。
東京都のディーゼル規制はあくまでも条例で、東京都内にしか適用できない。ですが、とくにトラックなどの輸送を目的とする車は県をまたいで移動するわけです。東京都を通過するためには、他県の車もこの規制を守る必要が生じる。これによって、PM(粒子状物質)排出量は規制開始前の20分の1に減りました。
この15年ほどで、日本の空気を以前よりクリーンにした条例になったと思うのですが、普段の暮らしからではなかなか日本の空気がきれいであることを意識できないんですよね。
環境問題に目が向きづらいのはなぜなのか
村上:たしかに。日本人はなかなかそうしたことに目が向きづらいのかもしれません。ヨーロッパのほうが環境問題に関心が高い理由を考えてみると、先述した電力会社の選択の例もそうですが、よりマクロな視点でも比較しながら生活しているからかもしれません。
ヨーロッパでは国を移動することが珍しくなく、国を移動するから「この国のここは素晴らしい」「ここはあまりよくない」と感じることもできます。より環境のいい国、より教育がいい国、より生活水準の高い国を選んで移住します。だから、国の政策にも敏感なのです。
一方で日本人は、国を離れようと考えることはほとんどありません。政府は、どんな政策を打っても「まぁ国民もずっといてくれるから」と思ってしまう。国民も、その政策がいいか悪いかを比較する対象を持っていない。
これはお互いに甘えを生む構造を作ってしまっていると思います。世界がつながっている人たちは、お互いの国を意識しながら行き来しています。他国が動けば自分たちも動かなければならないのです。
猪瀬:そのとおりですね。拙著『カーボンニュートラル革命』でも触れていますが、世界のEVの販売台数は、テスラが50万台、フォルクスワーゲン(VW)が27万台となりました。日本は自動車先進国と言われていましたが、日産が14位、トヨタが17位と遅れています。