日本人はエネルギー問題の大潮流をわかってない 消費者としてどう行動するかが問われている
その後、消費者はGMのEV回収に抗議デモを起こしました。カリフォルニア州の規制当局が排ガス規制を強化した背景もありますが、消費者がEVを求めた結果が、2012年以後のテスラの躍進につながった。株式市場でも、実績のなかったテスラの株価は上がっていきましたよね。
村上:ええ。日本では消費者や市場が先に動くケースがほとんどなく、政府が補助金を投入して無理やり動かさざるをえないことが多くあります。スタートアップ企業は、政府の支援がなくても新しい市場を生み出していますが、やはり「考える消費者」の存在が必要です。
拙著『サステナブル資本主義』でも触れていますが、消費者から得た資金(売上高)は、資金調達の役割も担っているわけです。消費は企業にとってファイナンスの一種であると同時に、企業価値を高める行為でもある。テスラの株価が上がり続けているのも、そうした理由からです。
このようなことをふまえると、私たちはエネルギーも「商品」と捉えて選択していく必要があるという実感が深まるのではないでしょうか。スタートアップが提供する新しいコンセプトのエネルギーに共感する消費者がいれば、立ち上がるビジネスはますます増える。
カリフォルニア州のEVのように、日本でも消費者の要求から市場が立ち上がるべきです。市場が立ち上がった後、政府が補助金を出すなりの後押しをすれば、カーボンニュートラルに向けた動きも促進されると思います。
日産「リーフ」がもったいなかったワケ
猪瀬:その流れを作るためにも、日本でも消費者運動が起きないといけません。日産自動車はテスラより早く、2010年に世界で最初の量販型のEV「リーフ」を販売しましたが、すぐに低迷してしまいました。航続距離が短かったことも原因かもしれませんが、消費者がEVの必要性を理解せず、市場も反応しなかった。とてももったいないことをしたなと思います。
村上:「リーフはすごい」とは思ったかもしれませんが、リーフを買うことが日本の産業や気候変動にどのくらいインパクトがあるのかを、考えられる人が少なかったのでしょうね。
猪瀬:二酸化炭素がどんどん増えていることに対して、日本人の意識が低いことも影響していると思います。プラスチックごみの分別はするけど、世界中で環境問題が死活問題になっているという課題意識は薄い。ニュースで扱われることも少ないのも課題だと感じます。