日本人はエネルギー問題の大潮流をわかってない 消費者としてどう行動するかが問われている
実はこの送配電のロスと同じようなことが、ほかの産業でも起きています。例えば、魚は豊洲市場に集めてから各地に運ぶように、集めて運び直す方法が当たり前に行われています。しかし、多くの産業で地産地消するほうが効率がいいという方向に切り替わっていくと思います。
スマートグリッド化によって、エネルギーが地産地消されるようになれば、効率も上がり、電気代ももっと下がっていくでしょう。
猪瀬:おっしゃるとおりで、送電線を軸に考えてみると、地域分散型の再生エネルギーを作って、すぐ近くのエリアに運んでいけば送電効率はかなりよくなります。エネルギーの地産地消は理にかなう方法です。
エネルギーの地産地消モデルが日本をリーダーにする
村上:このエネルギーの地産地消は、地域の実力差が比較的均一である日本の特徴を生かして浸透しやすいシステムだと考えています。財政や収入の差も東京だけは飛び抜けていますが、そのほかの地方都市ではさほど大きくありません。州格差が激しいアメリカと比較すると、日本の地方都市の差は小さいと言えます。
人口の90%が住む地方では、地産地消型のネットワーク作りのコンセンサスは取りやすく、再現性も高い。ある地域でエネルギーの地産地消がワークすれば、全国に広げられる可能性がすごく高い仕組みです。私はこれからの最先端は、90%の人が住む地方で生まれるのだと思っています。
持続可能性を重視する昨今の流れから考えると、一極集中型よりも地産地消のような分散型の設計思想のほうが、社会インフラとしてのニーズが高いでしょう。
日本が先んじてエネルギーの効率的な地産地消モデルを確立できれば、そのシステムを世界に販売していけます。世界のリーダーになれると私は本気で思っています。
土地が狭いオランダが農業の大国になろうとしているのと同じように、小さな国が示す新しいモデルはたくさんあるはずです。
猪瀬:そのためにも、消費者として1票を投じることが重要です。例えば、テスラは2012年に電気自動車(EV)を発表して以降、順調に売り上げを伸ばしていますが、ゼネラル・モーターズ(GM)が1996年にEVを発表したときは一瞬のブームで終わってしまいました。
当時、リース販売されたEVは好調だったにもかかわらず、GMはリース販売をやめ、すべての車体を回収しました。その背景には石油会社等からの圧力があったとも言われていますが、それが事実であれば老舗企業の既得権益が新しい市場を奪ったわけですよね。