水素がここへ来て一段と有望になってきた理由 80年超の歴史持つ岩谷産業が起こした製造革命
LPガス大手の岩谷産業が水素に挑む理由
渡邊 佐和子(以下、渡邊):LPガスを得意とする岩谷産業が、なぜ今、水素事業に取り組んでいるんでしょうか。
牧野 明次(以下、牧野):当社の創業は1930年ですが、1941年から産業用に水素を販売してきました。酸素をつくる過程で水素も生成されるのですが、それを活用しないのはもったいなかったからです。
併せて創業者は、将来的に石炭から石油へ、そして液化天然ガスへといったように炭素の少ないものへと変わっていく流れの中で、「炭素のない水素はエネルギーになっていく」と予測しており、私たちもその考え方を継承してきました。私が入社した1965年当時、「そのうち水素で飛行機が飛ぶぞ」という話があったのを覚えています。
1978年には初めてH-Iロケット用の液化水素をつくり、燃料として供給しました。その後、2006年には関西電力さんと共同で、日本で初の液化天然ガスの冷熱を利用した液化水素のプラントを大阪・堺につくりました。
真山 仁(以下、真山):創業者が予測し、描いた夢を、伝承されてきた過程で、現実にビジネスとして成り立つと見極めて、一歩前に踏み出すと決断されたときがあったと思います。夢が夢でなくなったターニングポイントは?