水素がここへ来て一段と有望になってきた理由 80年超の歴史持つ岩谷産業が起こした製造革命
ところが、アメリカや恐らく中国やヨーロッパでは、「化石燃料の限界が近いことは明らかなので、次世代のエネルギーを育てていかなくてはいけない」という考え方が支持される文化です。日本の慎重さは、非常に歯がゆいです。高コストの問題もありますが、私たちは水素エネルギーを選択肢として認めてこなかったため、まだスタートラインに立てていない印象です。まずはもっと水素と仲良くなる、理解する必要がありますね。
牧野:そうですね。「危険は100%絶対ない」とは言い切れません。ただ、正しいルールに従って使っていただければ、水素も油も都市ガスも安全性はみんな同じです。
とくに今は水素のエネルギーとしての創成期になりますから、絶対に事故を起こすようなことがあってはいけません。ステーションにしても工場にしても、水素での事故を起こさないように、いろんな手段を講じてやらせていただいています。
真山:ベンチャー企業のように試行錯誤しながら、でも先駆者としては失敗できない、とても大変なミッションだと思います。次のビジョンはありますか。
一般家庭で活用する実証実験も進む
牧野:水素をそれぞれのご家庭で使っていただき、身近に感じていただくビジョンを描いています。今のところはトヨタ自動車さんが初めて市販した燃料電池自動車の「MIRAI」(ミライ)が2014年に登場して5年余りですが、これが一般の人たちが水素を身近に感じていることだと思います。
北九州市では、水素を各ご家庭に都市ガスのように配管で供給して、それぞれ個々に水素で電気を起こす実証実験を行っています。この実験が安全にできれば、将来的にはシリンダーに入れた水素をプロパンのように各ご家庭へ持っていき、家庭用の燃料電池を使って電気を起こし、それで電灯や給湯、暖房に利用できるようになると考えております。
渡邊:水素が、電気やガスのような働きをするわけですね。
牧野:はい。安全性をきちんと立証し、一般の方たちに水素を身近なエネルギーとして安心して使ってもらえるようになるための実験をしているのです。
水素は、空気より非常に軽いので、すぐ空中に拡散します。水素に限らず、100%絶対に安全だというエネルギーはありませんが、正しい使い方を徹底し、あわせてガスが漏れないようなシステムや万が一に備えるシステムなどで安全性を強化していくことが、普及のためにも非常に重要だと考えています。
(構成:二宮 未央/ライター、コラムニスト)
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