イスラエルの超天才が警告する気候変動の大災厄 人類が化石燃料依存から脱さないと何が起こるか

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あいにく、2018年現在、温室効果ガスの排出は減っていないどころか、相変わらず増えている。人類はさっさと化石燃料への依存を断ち切らないと手後れになる。今日にもリハビリを始める必要がある。来年や来月ではなく、今日だ。「私はホモ・サピエンスといいます。化石燃料依存症です。よろしくお願いします」と。

この穏やかならぬ構図のどこにナショナリズムは収まるのか? 生態学的な脅威に対するナショナリズムの答えはあるのか? どれほど強力な国であれ、単独で地球温暖化を止められるのか? たしかに個々の国はさまざまな環境に優しい(グリーン)政策を採用でき、その多くが、環境面だけでなく経済面でも理に適っている。

新しいテクノロジーがさまざまな分野を変える

政府は炭素排出に課税し、石油やガスの価格に外部性のコストを上乗せしたり、今まで以上に厳しい環境規制を採用したり、汚染をしている業界への助成金を削減したり、再生可能エネルギーへの転換を奨励したりできる。また、一種の生態系版マンハッタン計画として、生態系に優しい画期的なテクノロジーの研究開発に、これまでより多くの資金を投入することもできる。過去150年間の進歩の多くは内燃機関のおかげだが、安定した物理的・経済的環境を維持したければ、内燃機関はもう引退させ、化石燃料を燃やさない新しいテクノロジーで代替しなければならない。

テクノロジーの飛躍的な発展は、エネルギー以外の多くの分野でも役に立ちうる。たとえば、「クリーン肉(ミート)」開発の持つ可能性を考えてほしい。現在、食肉産業は何十億という感覚ある生き物に甚大な苦痛を与えているだけでなく、地球温暖化の主要な原因の一つや、抗生物質と毒物の主要な消費者の1つ、大気と土壌と水の主要な汚染者の1つにもなっている。イギリスの機械技術者協会がまとめた2013年の報告によれば、1キログラムのジャガイモを生産するには287リットルの真水が必要なのに対して、1キログラムの牛肉を生産するにはおよそ1万5000リットルの真水がいるという。

中国やブラジルのような国が繁栄して、さらに何億もの人がジャガイモの代わりに牛肉を日常的に食べることが可能になると、環境への負荷は悪化しそうだ。アメリカ人やドイツ人はもとより、そうした中国人やブラジル人を説得して、ステーキやハンバーガーやソーセージを食べるのをやめさせるのは難しいだろう。だが、もし技術者たちが、細胞から肉を「栽培する」方法を発見できたらどうなるだろう? ハンバーガーがほしければ、牛をまる一頭育てて殺す(そして、死体を何千キロメートルも輸送する)代わりに、たんにハンバーガーを栽培すればいいではないか。

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