イスラエルの超天才が警告する気候変動の大災厄 人類が化石燃料依存から脱さないと何が起こるか
これはSFのように聞こえるかもしれないが、すでに世界初のクリーン・ハンバーガーは2013年に栽培され(そして食べられ)ている。そのときには33万ドルかかった。その後4年間の研究開発のおかげで、価格は1個当たり11ドルまで下がり、今後10年以内には、工業生産されたクリーン・ミートは家畜を殺して生産した肉よりも安くなることが見込まれている。このようなテクノロジーが発達すれば、何十億もの動物を見るも無残な生活から救い出し、何十億もの栄養不良の人間に食べ物を与えるのを助け、同時に生態系の崩壊を防ぐ一助にもなりうる。
したがって、気候変動を避けるために政府や企業や個人ができることはたくさんある。だが効果をあげるためには、グローバルなレベルでそれらを行わなければならない。気候に関しては、国家には断じて主権はない。国家は地球の裏側の人々が取る行動のなすがままだ。
太平洋の島国であるキリバス共和国は、たとえ自国の温室効果ガスの排出をゼロまで減らしたところで、他の国々が追随してくれなければ、上昇する海面の下に沈んでしまいうる。アフリカのチャド共和国は、たとえ国内のすべての屋根にソーラーパネルを取りつけたとしても、遠方の外国人たちの無責任な環境政策のせいで不毛の砂漠となりかねない。中国や日本のような大国でさえ、生態系に関する主権は持っていない。上海や香港や東京を凄まじい洪水や台風から守るためには、中国と日本はロシアとアメリカの政府を説得し、旧態依然のアプローチを放棄してもらわざるをえない。
核戦争よりもなおさら危険かもしれない
ナショナリズムに基づく孤立主義は、気候変動に関しては核戦争よりもなおさら危険かもしれない。全面的な核戦争が起こればすべての国が破壊されかねないので、それを防ぐことはあらゆる国にとって等しく重要だ。それに対して地球温暖化の影響はおそらく、国ごとに違うだろう。じつは、温暖化によって得をする国もあり、その筆頭がロシアだ。
ロシアは海岸沿いにはあまり資産を持っていないから、中国やキリバスと比べると、海面上昇に対する懸念がはるかに小さい。そして、気温が上がればチャドは砂漠になってしまいそうだが、同時に、シベリアは世界の穀倉地帯に変わるかもしれない。そのうえ、高緯度の氷が解けると、ロシアが幅を利かせる北極海の海上交通路はグローバルな交易の動脈になりうるし、カムチャツカは世界の交通の要衝としてシンガポールに取って代わる可能性がある。
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