イスラエルの超天才が警告する気候変動の大災厄 人類が化石燃料依存から脱さないと何が起こるか

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なかでも最大の脅威は気候変動の見通しだ。人間は何十万年も地球上に存在しており、何度となく氷河期や温暖期を生き延びてきた。ところが、農業や都市や複雑な社会が登場してからはせいぜい1万年余りにすぎない。完新世として知られるこの期間、地球の気候は比較的安定していた。完新世の標準から少しでも逸脱すれば、人間の社会はかつて遭遇したことのない、桁外れの難題に直面することになる。

それは、何十億もの人間モルモットを対象に無制限の実験を行うようなものだ。人間の文明が新しい状況に最終的には適応したとしても、その適応の過程でどれほど多くの犠牲者が亡くなるか、知れたものではない。

このぞっとするような実験は、すでに始まっている。将来の可能性である核戦争とは違い、気候変動は今起こっている現実なのだ。人間の活動、とりわけ、二酸化炭素のような温室効果ガスの排出は、恐ろしい速さで地球の気候を変えているというのが、科学界の一致した見方だ。

臨界点を超えたら世界的な悲劇は避けられなくなる

取り返しがつかない大変動を引き起こさずに、どれだけ二酸化炭素を大気中に排出し続けられるか、はっきりしたことは誰にもわからない。だが、最善の科学的推定によれば、今後20年間に温室効果ガスの排出量を劇的に減らさないかぎり、地球の平均気温は2度以上上がってしまい、その結果、砂漠が拡がり、極地の氷冠が消え、海水面が上昇し、ハリケーンや台風のような異常気象現象が増えるという。そして、今度はこうした変化のせいで、農業生産が乱れたり、都市が浸水したり、世界の大半が居住不能になったり、何億もの難民が出て新たな住み処を探し求めたりすることになる。

そのうえ私たちは、いくつもの臨界点に近づきつつあり、その点を超えてしまえば、たとえ温室効果ガスの排出を劇的に減らしても、流れを逆転させて世界的な悲劇を避けることはできなくなる。たとえば、地球温暖化のせいで極地の氷床が解けるにつれ、地球から宇宙へ反射される日光が減る。

つまり、地球はより多くの熱を吸収し、気温がさらに上昇し、氷がなおさら速く解けるわけだ。このフィードバック・ループが決定的な臨界点をいったん超えてしまえば、歯止めの利かない弾みがつき、たとえ人間が石炭や石油や天然ガスを燃やすのをやめても、極地の氷がすべて解けてしまう。したがって、私たちは自分が直面している危険に気づくだけでは足りない。「今すぐ」実際に何か手を打つことが肝心なのだ。

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