日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か

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この結果、自らリスクをとって金融機関も貸し出しを行うことはせず、企業も個人も借り入れで投資は行わなくなる。

中央銀行が異常な量的緩和を行っていなければ、つまり、国債の実質直接引き受けをせずに、通常の範囲での金融緩和を行っていれば、資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう。

そして、金融(株式や債券)市場は、暴落することになるだろう。金利が上がるし、中央銀行が金利を押さえ込んだとしても、そうなると経済も将来の市場の不透明性が増大し、リスクが高まる。ましてや、インフレになるリスク、そしてそのときに大増税、財政支出の急減による大不況のリスクがあるから、誰も投資しなくなるだろう。

つまり、リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう。

日本でMMTを絶対にやってはいけないワケ

MMT理論を現実の政策として実行することにより、金融市場が混乱にとどまらず、崩壊してしまう危機に追い込まれる可能性は、世界で日本が最も大きい。日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。
なぜなら、これが政策としての第3の問題点であるが、インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである。

インフレがなぜ起きにくいのかは、また改めて詳しく議論したいが、大まかにいって理由は3つある。第1に、企業の価格設定行動の結果の合計がマクロ的な物価水準であるから、企業が値上げをできるだけしないようにする日本ではインフレが起きにくい。

企業が値上げをできるだけしない理由は、消費者が値上げに過度に敏感であり、値上げで失う売り上げがあまりに大きいため、日本では商品提供者はできるだけ値上げしないのである。だから、卸売物価は変動しても消費者物価にはあまり反映されないのである。

次ページ第2、第3の理由とは?
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