3月18日金曜日午後、日本銀行は、大規模金融緩和を継続することを政策決定会合で決め、黒田東彦総裁が記者会見を行った。
このところ、ずっと同じ緩和政策を継続しているだけだから(微修正はあったとしても)、記者会見は盛り上がりに欠けるのが常だった。しかし、今回は白熱した。その理由は、ウクライナ情勢でも、株価の暴落でもなかった。記者たちの質問が集中したのは、インフレと円安だった。
インフレ高進を恐れる世界
3月に入ってからは、中央銀行のイベントが続いた。まず、3月10日、ECB(欧州中央銀行)が、予想外の資産買い入れの前倒し終了を表明した。金融緩和縮小である。そして、イングランド銀行も3回連続の利上げを行った。
次に17日にはFED(アメリカの中央銀行)も0.25%の利上げを行い、ゼロ金利の終了からの利上げを開始した。さらにFEDは、今年はこれを含めて1.75%の利上げを見込むことを表明。来年も1%程度の利上げを見込むことを表明した。これも大きなサプライズだった。
しかも、株式市場はこれらにポジティブに反応し、大幅上昇となった。株式市場は、利上げによる金融緩和縮小よりも、インフレ高進をより恐れていたことになる。
これは当然だ。昨年後半から世界的なインフレが巻き起こり、成熟国では40年ぶりの高いインフレ率となっていたからだ。コロナの影響を含むサプライショックだが、経済の基本構造の変化もあり、世界的な人手不足となった。失業率は世界的に低下、賃金コストの大幅上昇となり、それでも労働力不足が続いている。
ここへ、ウクライナ戦争が勃発した。ロシアへの経済制裁は、停戦が実現しても長期に継続すると見込まれている。エネルギーの世界的な不足は、理念だけのグリーン化(脱炭素)を進めたことから構造的におきていたのだが、これがさらに深刻化、長期化しそうだ。資源価格だけでなく、世界的な物流などの混乱もコロナ禍がピークを越えても継続する見通しとなった。インフレは深刻化、長期化し、景気は下降に向かうことも必然だから、スタグフレーション(不況とインフレの同時進行)必至となったのである。
だから、とにもかくにもインフレを抑えることが先決で、世界の中央銀行は金融引き締めに一気に舵を切ったのである。この流れに完全に乗り遅れているのは、世界で日本銀行だけだ。その直接的な理由は3つある。
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