第1に、インフレが相対的に弱いということだ。
日本の消費者物価上昇率は今のところ前年同月比0.5%程度で、インフレには程遠い。しかし、これには携帯電話料金値下げの影響がある。これがなくなり、さらに原油を中心とした資源高が加われば、すぐに2%を超えることになる。しかし、6%とか8%といっているアメリカや欧州とは、それでも大きな開きがある。
第2に、コロナ後の需要の回復が米欧よりも鈍いことだ。アメリカでは、賃金上昇が著しい。これは、景気が過熱し、賃金に上昇基調が生まれ、それがとまらなくなったからである。人手不足は極端に深刻だ。同時に、原材料、部品の供給制約に直面し、明らかにインフレが止まらないスパイラルに入った。そこへ、ロシアのウクライナ侵攻である。インフレは止まらず、インフレによる景気後退懸念のところへ、まったく別の外部要因で、景気が一気に悪化する要因が降ってきた。スタグフレーション必至の状況である。
このような状況では、何が何でもまず、インフレを止めるしかない。欧州は、そこまで賃金上昇圧力は強くない。だが、「ウクライナショック」によるインフレの加速は、エネルギーのロシア依存度の高さがアメリカとは異なるため、激しいものになり、こちらもインフレ抑制が何よりも最優先だ。景気失速懸念はより強く、その結果、スタグフレーションはもはや始まっていると言ってもよい。
「円安は経済にプラス」という信仰継続
第3に、円が安いほうが経済にプラスだと思っていることだ。
世界中どこの国でも、そして、経済理論としても、自国通貨が強いほうが、自国経済にプラスであるという真理が存在する。
一時的に、短期では為替安を利用して、自国製品を安売りして、生産を増やし雇用を増やす効果はあるから、一時しのぎの失業対策としては、通貨安政策はありうる。あるいは、賃金水準が国際的に(相対的に)どんなに低くなってもいいから、同じ製品を同じ労働者で、同じ経済構造で雇用を維持したいと思えば、通貨安政策はありうる。しかし、そんな政策は理論的にはもちろん間違っているし、現実の政策としても、いまやどこの国もとらなくなっているが、日本は、この政策が好きなので、円安志向の政策マーケットは継続している。
その結果、金融緩和を続け、自国通貨が安くなり、国が貧しくなっても構わないというスタンスなので、世界的な金融引き締めが起きても追随する必要はないと思っている、世界唯一の国となっているからである。
しかし、これら3つはすべて間違っている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら