その理由は以下の通りだ。
第1に、そもそもインフレは弱くない。すでに40年ぶりのインフレだ。企業物価は40年ぶりの9.3%上昇である。これが消費者物価に反映されていないのは、一時的に企業が無理をしているからにすぎない。
日本の物価が上がらないのは、企業が値上げをためらい、消費者が価格上昇に異常に過敏だ、ということが理由だ。しかし、原材料などのコストは上がっている。それに対して企業が利益を減らし、無理をしているから、企業がばたっと倒れて、結局労働者にしわ寄せが来る。あるいは、生産をあきらめてしまい、消費者は、そもそも希望の商品が手に入らなくなり、安物、質の劣化した望まないものを消費させられることになる(消費者がけちであることによる自業自得なのだが)。そして、もちろんコスト削減をギリギリまで行うから、企業は賃金を上げるなどとんでもない、ということになる。日本経済は貧しくなっていくのである。
日本経済にとって円安は明らかにマイナスになった
第2に、現在の世界的な利上げは、通常の金融引き締め、需要の過熱に対応する引き締めではないのである。インフレ上昇そのものを抑えるための引き締め、利上げなのである。
通常、金融政策における引き締め、利上げ政策は、景気を冷やすために行う。景気が過熱しているかどうかのバロメーターがインフレ率である。これが上昇してくれば、景気を冷やすため、需要を抑制するために、利上げを行う。
しかし、インフレはバロメーターであるだけでなく、物価が上昇すること、そのものが経済にマイナスであるため、インフレ自体が経済にとって悪なのだ。
消費者、とりわけ、低所得者層は、インフレに耐えられない。生きていけないのである。だから、政治的にも、インフレを抑えることが重要であり、アメリカと欧州でインフレを抑えることは最優先課題なのである。
インフレになる、ということは、モノの値段が上がる、ということである。ということは、一定の所得があっても、インフレが進めば可処分所得は落ちることになる。そして、これは消費者だけでなく、企業にとっても同じことであり、原材料コストの上昇により、収益が悪化することになる。
相対的に立場の弱い新興国などは、アメリカの利上げで、通貨安になることが経済にとって致命的であるから、防衛的に対抗して利上げを行う。とりわけ、資源輸入国はそうである。
これが、第3の理由である。日本経済にとって、いまや明らかに円安は、ほぼすべての面でマイナスになったのだ。
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