日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か

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日本においてはとりわけ、2013年、2014年と需給ギャップが解消されてもインフレが起きず、インフレ率は景気の指標としても有効でないことが示されているから、日本こそ、MMTをいちばんやってはいけない国なのである。これは第3の点のところで詳しく議論しよう。

政府が大規模な財政支出を続ければどうなるのか?

第2の害悪として挙げた「金融市場がどうなってもよい」という考え方は、財政支出の適切な規模をMMTでは判断できないこと以上に、経済を壊滅的に破壊する可能性がある。

例えば「財政出動をとことん行って金利が大幅に上昇しても、インフレがターゲットを超えない限り、財政支出を続ける」ということが起こりうる。これは、大規模な財政支出により、民間投資が大幅に縮小する、という典型的なクラウディングアウト(英語の元は「押し出す」の意味)を起こすということである。その結果、民間経済の活力、経済成長力は大幅に低下し、経済は長期的な大不況に陥ることになる。

これに対する彼らの反応は「理論的にはそのとおりだが、現在、世界経済は低金利で困っている。とりわけ日本はその最たるものだ。したがって、金利が上がらない現代でそのような心配をするのは杞憂だ」というものである。

これも、明らかに間違いで、金利が低いのは世界各国の中央銀行が無理やり低金利に押さえ込む、大規模な金融緩和を行っているからである。もし、低金利を維持したまま、大規模財政支出を継続すれば、民間の投資は、干上がってしまう。

投資資金は限られており、金利という価格による需給調節が効かなくても、政府セクターに取られてしまえば、リスク資金は民間へ回ってこない。さらに、人手が不足する。労働力は限られており、とりわけ優秀な人材はすぐに枯渇する。すると、民間投資として適切で利益の上がる投資を行える人材が不足する。彼らは、大規模財政支出に乗じて、その分野で稼ぐために活動しているからである。

中央銀行が資金を供給したところで、それを受け取る民間経済主体はいない。将来の経済見通し、リスクが不透明のため、投資も控えるし、儲かるかわからない投資のための資金も利子率ゼロでも借りない。

ただで資金をくれるのであれば、それはもらうだろうが、それは中央銀行が行うのではなく、政府財政で行うことになるから、これは財政政策であり、民間投資ではない。この財政支出がうまくいくかどうかが、保証されていない以上、この財政出動は意味がない。これは第1の、ワイズスペンディングの議論にも関係する。

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