もちろんアップルのデザインとブランド構築力が優れていることや、主力商品であるiPhoneの粗利益率の高さなどは周知の事実だ。
同社は、アップルミュージック、アップルTV、さらにはiPhoneの最新型への更新などを束にして定期的に定額で売る、著者が「ランドル」(定期的な収入を生む製品・サービスの束)と呼ぶビジネスモデルによって、顧客の購買可否の意思決定回数を減らして(回数が多いと脱落が生じやすく不安定になるのだ)、さらに収益を拡大する余地があると予想する。
GAFA以外にも、ウーバー、テスラ、その他の「+X」に名前が挙がる企業のビジネスについて著者は縦横に論じている。ビジネスパーソンがビジネスについてヒントを求める目的でも読める本だし、アメリカの個別株式に投資している投資家にとっては、企業評価の視点を知るうえで大変お得な本だ。
詳しくは本書を手に取ってほしいが、テスラの株価について、過去著者の見通しが外れたことが正直に語られた後に、ではテスラのどこがすごいのか、それでも現在の株価は高すぎないのか、といった問題が率直に語られている。また、ソフトバンクグループのビジョンファンドが、アメリカのベンチャー投資の世界で、またビジネススクールの教授から、どう見えているかといった興味深い話題もある。
GAFAの色分け、青の騎士と赤の騎士とは?
残りの2つ、GAFAの「G」と「F」についても、もちろん強みが説明されている。端的に言って、この2社は広告のプラットフォームとして広告主にとって便利なのだ。規模ときめ細かさの両方において、オールドメディアに勝ち目はないと著者は指摘する。オールドメディアの広告でブランドを構築しようとする「ブランドの時代」は終わり、今は「プロダクトの時代」なのだ。
そして、コロナ禍の足元で広告費が落ちていても、いずれ経済が回復すれば両者はその恩恵を大いに受けるだろうと予測する。ただし、著者は、グーグルとフェイスブックに対して厳しい。彼はGAFAを「青の騎士」と「赤の騎士」の2色に色分けしていて、「G」と「F」は(邪悪な印象の)赤の騎士の「2大巨頭」として分類されている。
赤の騎士の特徴は、ユーザーが商品であることだ。彼らは、実質的にユーザーのデータを外部に売り渡すビジネスで稼いでいる。「またステイホームのせいでフェイスブックとグーグルを利用する機会が増え、彼らの商品在庫が増えている。そう、ここでの、“商品在庫”とは、あなたのことである」と著者は書いている。「おっしゃるとおり!」と言うしかない。
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