岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」とは、いったいどのような内容なのか。首相がこの言葉を使ったのは自由民主党の総裁選挙のころからだが、同氏はその内容を体系的に語ったことが一度もない。内容を定義せず、理解もせずに、単に言葉の響きがいいから、「新しい資本主義」をキャッチフレーズとして訴えたのだろうか。これは、政治家としての岸田氏に対しては大変失礼な疑問だろう。
何とも奇妙な「新しい資本主義実現会議」
しかし、新しい資本主義実現会議という何とも奇妙な有識者会議を立ち上げた経緯を見ると、無礼も失礼もなかったようだ。この会議の存在自体が、岸田氏の「新しい資本主義」という言葉に、もともと中身がなかったことを告白している。
「新しい資本主義」という中身のない言葉に、愚かな有権者は共感するのではないかという岸田氏の気分のほうがよほど失礼だった。「新しい資本主義を目指します。その中身は、これから考えます。支持してください」という白紙委任状を求めるメッセージだったのだ。何とずさんで、いい加減なことか。
しかし、先般の総選挙では、自民党が事前に予想されていた以上の議席数(絶対安定多数となる261議席)を獲得し、野党第1党の立憲民主党は大幅に議席を減らした。この背景は、「与党の政策には中身がなかったが、野党の政策にはダメな中身がはっきり見えた」ということだった。立憲民主党の自滅だ。本稿は、もっぱら岸田政権を批判的に検討するのだが、一方で野党にも「もっとしっかりしてほしい!」と申し上げておく。
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