11月8日に、新しい資本主義実現会議の第2回会合が開かれた。内閣官房のホームページを見ると、事務局が作った「緊急提言(案)」と、6名の委員が作った提出資料が掲載されている。委員の提出資料は、短い発言のための「メモ的な性質」のもので、現段階でいいとも、悪いとも、言えるようなものではない。
新しい資本主義とはいったい何なのか?
そもそも「『成長と分配の好循環』と『コロナ後の新しい社会の開拓』をコンセプトとした新しい資本主義」(「緊急提言(案)」の冒頭の文章)と言われても、新しい資本主義とは何であるかを理解できる委員は1人もいないだろう。委員としての選出は当人にとって名誉なことかもしれないが、こんな委員会に付き合うのはご苦労なことだと思う。
提言を読むと、成長戦略として、「1.科学技術立国の推進」「2.わが国企業のダイナミズムの復活、イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援」「3.地方を活性化し、世界とつながる『デジタル田園都市構想』の起動」「4.経済安全保障」が掲げられ、それぞれの項目に複数の政策に関わる作文が並んでいる。
次に、分配戦略として、「1.民間部門における中長期も含めた分配強化に向けた支援」「2.公的部門における分配機能の強化」と項目が立てられて、それぞれに細目の説明が並ぶ。文書としては、A4で17ページほどの暑苦しいものだ。
これは、かつて小泉純一郎内閣でスタートした「骨太の方針」が、年数を重ねるごとに細目が増えて「小骨だらけの方針」に様変わりした後の文書を思わせる出来映えだ。あの文書も読んでつまらなかったが、霞が関的には、「あの文書でひとこと触れておくと、後で予算をつけてもらいやすい」という意味を持つ文書だった。官僚にとっては予算を取るためには文言を載せる働きかけが必要だったし、官僚や政府の政策を食い扶持にしているビジネスマンには、情報価値のある文書だった。
今回の中身のないふわふわした会議も、そこで何かを話して議事録に載せておくと、「新しい資本主義」の括りの下で、岸田政権の政策として予算がつく種類の「儀式」の場となっていくのだろう。官僚にとっては使えるツールだ。
本欄にはビジネスパーソンの読者も多いだろうから、あくまでも「ビジネスの基本」として述べておくが、林立する各種会議の提出資料や議事録は「予算」との関連で読み込むべきだ。また、政府との商売にかかわっている向きは、会議の委員や事務局の官僚と個人的に親しい関係を作ると好都合な場合がありうる。筆者は元商社マンなので、後輩ビジネスパーソンのために書いておく。
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