本書をしばし離れるが、筆者は、フェイスブックがかつて発表した通貨システム「リブラ」が実現しなかったことを少々残念に思っている。
世界に拡がり、金融取引(たとえば外国への送金)のコストを下げ、取引の情報がさらにビジネスに利用できる「理想的に野放図に拡大したリブラ」を「究極のリブラ」と名付けよう。究極のリブラの下では、中国のアントフィナンシャルの先を行くスーパー金融ビジネスが展開できる。
しかし、「究極のリブラ」への道を歩ませるには、フェイスブックはあまりに「徳のない会社」だった。
独占企業は競合者を嫌うが、各国の通貨システムの独占企業である中央銀行が一斉に懸念と反感を示し、有力な味方は現れなかったので、リブラ構想はついえた。ギャロウェイも新著で「フェイスブック以上に“政府の信頼性の欠如”に寄与している会社はない」とこの会社への批判には容赦がない。
だが「究極のリブラ」から想像できるビジネスは、あらゆる金融サービスのビジネスのどこが非効率的でまだ改善余地があるかを考えるうえでの、概念上の絶好のベンチマークになると思う。
次の「ディスラプション」はどこに起こるのか?
さて、前述の通り、GAFA+Xには、次のディスラプションの対象になる「獲物」が必要なのであった。そのセクターはどこにあるか?ギャロウェイによると「それはインフレ率よりも早く価格が上昇しているにもかかわらず、それに見合ったイノベーションがないセクターだ」という。これは、応用の利く物の見方だろう。
また、詳しくは、本書に当たってほしいが、著者は、ディスラプションの主役となる企業の条件を、前著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』で示した時価総額1兆ドル企業の条件として示した「Tアルゴリズム」を発展させた形で説明している(合計8つの要素で構成される)。「人間の本能」、「キャリアの箔付け」、「垂直統合」、「ストーリーテリング」といった言葉が並ぶ。
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