アベノミクスでは、金融緩和で金利を低下させたため、顕著な円安が進行した。
円安政策がとられたのは、円高になると企業の利益が圧迫されるという声が産業界からあがったからだ。
円安になれば、現地価格が変わらなくても、円表示の売上高が増えるので、利益が増える。
現地販売価格を若干切り下げても、円表示の売り上げは前より増える。
つまり、日本企業は、安売りで輸出を増やし、利益をあげてきたわけだ。
韓国は通貨安を求めなかった
韓国では、「漢江の奇跡」と言われたように、1970年代から輸出主導型の成長が続いてきた。
このため、外需に対する依存度がきわめて高い。GDPに対する輸出の比率は、日本では10%程度だが、韓国では40%程度の値になっていた。
これからすると、ウォン安政策が取られてもおかしくない。しかし、韓国はそれを行わなかった。
図1で見るように、1990年代末のアジア通貨危機で一時的にウォン安になったが、すぐに回復している。そして、2006~2007年頃には、通貨危機以前よりも高くなった。
その後、リーマンショックで低下したが、すぐに回復している。
2013年頃からは顕著に上昇している。この時期に、日本ではアベノミクスによって低下したのと対照的だ。
通貨高になると、現地価格がそれまでのままでは、自国通貨建ての売り上げが減少する。
売り上げを一定に保つためには、現地通貨建ての価格を引き上げなければならない。
それでも売り上げが減少しないようにするためには、品質を高める必要がある。韓国では、そのための努力が行われた。
日本ではGDPが成長しなかった
この結果何が生じたか?
日本の場合、円安が実現して、2000年頃から輸出は大幅に増大した(図2<日本と韓国の財輸出額>参照)。
しかし一方で、円ベースの輸入額も増えた(図には示していない)。
この結果、財貿易の黒字は増大しなかった。図3<日本と韓国の財貿易収支>がそれを表している。
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