財貿易黒字は、1990年代の中頃までは増加していたのだが、それ以降は増加しなくなった。つまり、経済を成長させる力を失った。
2013年頃以降は、財の貿易収支が赤字になっている。つまり、GDPを減少させる方向に働くようになった。
だから、輸出企業の利益が増え、株価も上がったのだが、経済成長は停滞した。そして賃金も上がらなかったのだ。
しかも、企業が円安効果に依存するようになったため、技術開発とビジネスモデルの革新を行わなくなり、日本の輸出競争力は低下していった。
韓国では成長につながった
それに際して韓国の場合には、通貨が増価したにもかかわらず、輸出が拡大した。
輸出額は、2000年頃には、日本の半分程度だったが、2008年頃には、財輸出額で日本と大差がないまでになった(図2参照)。
人口が日本の約半分以下の韓国が、輸出で日本と同じくらいになったのだから、輸出依存度がいかに高いかがわかる。
そして、貿易黒字も増大した。
図3に示す財貿易の収支差で見ると、1990年代中頃までは、収支差はほとんどゼロだった。しかし、1998年頃から増加し、経済を牽引する役割を果たすようになっている。
さらに、2010年以降には、黒字が大きくなっている。
韓国では外需依存度が高いので、これがGDPの成長に大きく寄与したと考えられる。
韓国の成長率が高い大きな原因がここにある。
そして、1人当たりGDPや賃金を上昇させた原因もここにある。
20年以上ゼロ成長では賃金が上がるはずがない
賃金を引き上げるため、日本政府は企業に賃上げを要請するとしている。
あるいは、賃上げをした企業の法人税を減税するという。
しかし、こんなことをしたところで、賃金が上がるはずがない。なぜなら、元手がないからだ。
賃金と企業所得の分配率は、技術によって決まる面が大きい。政府が介入しても、変えられるものではない。実際、時系列データを見ると、分配率は長期にわたってほぼ安定しており、大きな変動はない。
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