「サイボーグ先進国」日本を引っ張る33歳の野望 「合理的に考えれば、ネオ・ヒューマンに至る」
現在BMIは、ある程度実用化されていますが、それを使って人間のすべての思考を読み取るというところまでは至っていません。
たとえば、「これを掴もう」と考えるだけで、ロボットアームで物を掴むことができる、という研究があります。しかし、現在の技術では、やりたいことを直感的にアウトプットできている例はわずかです。
実際には、例えば、頭の中で頑張って九九を演算すればアームが動く、というように、「このスイッチを押せば、ロボットが動く」という変換が1段階入っていることが多いのです。
従来の義手も同じで、5本の指が動く義手は市販されていますが、思ったように動かせるのではなく、実際には手を「手前に曲げる」「外に反らす」という2つの生体信号しか認識できないものがほとんどです。
それらを組み合わせて、例えば「手前⇒手前⇒外」と動かせば「ピース」になり、「外⇒手前⇒手前⇒外」と動かせば「人差し指を立てる」など、格闘ゲームのコマンドのような制御をしており、その動きのバリエーションと切り替えの速度には限界があるのです。
僕たちのコア技術である生体信号処理技術は、その人の生体信号にシンクロさせて、「チョキ」の信号であれば実際チョキの動きをする、「手首を回す」信号であれば手首が回るというものです。
2016年には、この技術を用いて国際大会にも出場し、その制御の直感性と精度はさまざまな国の研究者に驚かれました。人が思考であらゆることをコントロールできるようなBMIは、10~20年後には実用化できると考えています。
ブレイン・マシン・インタフェースと世界平和
僕は、BMIにはさらなる可能性があると考えています。人とコンピュータだけでなくBMIで人と人の脳をつなげるという可能性です。
もちろんまだ先の話になりますが、これが実現すれば、人間同士のトラブルも減るのではないかと思っています。
トラブルが起きるときは、大抵、相手を理解できていないタイミングですよね。同じ揉めごとでも、長年の友人が相手なら、赤の他人の場合とは違って、「こんなことをしてしまったけれど、あの人も苦労をしてきた人だから、大目に見てあげようかな」という心理が働くこともあります。インスタントなコミュニケーションでは、そのような共有はできません。
しかし、お互いの人生を、脳と脳で5秒で語り合えるような世界になれば、理解が深まり、世界平和も訪れるだろうと思います。
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