「サイボーグ先進国」日本を引っ張る33歳の野望 「合理的に考えれば、ネオ・ヒューマンに至る」

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僕は子どもの頃からブラックホールなど宇宙や物理学全般に関心を持ち、「宇宙のすべてを解き明かしたい」という欲望を抱いてきました。たとえば、万有引力などさまざまな物理法則があり、定式化や理論化もされていますが、なぜその法則が生まれたのかまでは解明されていません。地球にいては発見できない法則もまだまだあるでしょう。

これは100年では終わらない課題だぞと感じ、幼稚園の頃には、すでに自分の体をアップグレードしなければならないという結論に至っていました。中学生の頃には「サイボーグになることでアップグレードを達成する」という発想に行き着き、現在に通じています。

有限のものと無限のものに、明確な隔たりを感じてきたというところもありました。最後には必ず死ぬとわかっているのに、なぜ自分は生きなければならないのか? その問いへの答えを探るより、逆に無限に生きてやろうという、自分の現状に対するアンチテーゼでもあるのです。

人間のアップグレードはどこまで進んでいるか

身体のアップグレードには、延命(ハードウェア)と、思考能力の向上(ソフトウェア)があります。

粕谷 昌宏(かすや まさひろ)/メルティンMMI代表取締役 1988年生まれ。創造性の追求において身体がボトルネックとなっていることに1991年に気づき、以来解決策を追い求めてきた。1998年に医療と工学の融合分野が解決策となることを予想し、2002年からサイボーグ技術の研究を開始する。
2006年に早稲田大学理工学部に入学。2011年にはロボット分野で活躍した35歳未満の研究者に贈られる日本ロボット学会研究奨励賞を受賞。2012年には電気通信大学大学院に移動。日本学術振興会特別研究員を経て2013年にサイボーグ技術を実用化する株式会社メルティンMMIを創業。2016年にはロボット工学と人工知能工学で博士号を取得。2018年にはForbesより世界の注目すべきアジアの30人として選出された(写真提供:MELTIN)

ハードウェアとしては、この先100歳に近づく頃までは、僕はまだ自分のこの身体に収まっていると思いますが、それ以降は無形のものになるだろうと想像しています。僕の脳にあたるものは、新しいなにかに物理的に収まってはいるけれど、それはネットワークにつながっていて、実質的には物理的な場所とは無関係に、僕は世界のどこにでも存在しているという状態です。

ソフトウェアとしては、ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)に注目しています。人間の表現には、言葉に出す、言葉には出さずに表情だけに出す、言葉にも表情にも出さずに身振り手振りで表す、文字を書く、などのいろいろな手段があります。そのなかの1つとして、BMIによって脳から直接伝える、という手段が加わる状態をイメージしています。

コンピュータやAIは、計り知れない速度で演算できます。人間の脳もまた、計り知れない速度で演算しているはずです。

ところが、人間の脳からコンピュータへ命令を入力するキーボードやマウスの入力速度は、演算速度の何百万分の1という凄まじい遅さです。これでは絶対にコンピュータやAIの性能を使いこなすことができません。インタフェースが遅いと、そこがボトルネックになってしまうわけです。

人間の能力全体を上げるというのはハードルが高いので、まずはそのボトルネックから解消していこうという発想で、僕はBMIに注目しています。

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