「サイボーグ先進国」日本を引っ張る33歳の野望 「合理的に考えれば、ネオ・ヒューマンに至る」
人間の思考能力とコミュニケーションの高速化は、情報化社会や工業といった特定の分野だけの話ではなく、人類の生活スタイルやクオリティにも影響するわけです。
BMIが進化すれば、どんな人でもお互いに相互理解できるような世界が訪れます。そして、それは思考が勝手に漏れるということではありません。今現在の人間が、ただ考えるのか文字で書くのか言葉で伝えるのかを選べるように、自分の意思で完全にコントロールすることができる。そんな世界をつくっていければと思っています。
サイボーグ化と未来へのコンセンサス
僕は自分のことを、先入観を取り払って、合理的に物事を考える人間だと分析しています。
たとえば、自分の手足は当たり前のように自由に動きます。それは、自分の脳と手足が神経を介してつながっているからです。ならば、そのつながりは有線だけではなく、無線でもいいでしょう。つながってさえいれば、どちらでもいいわけです。
このようにフラットに考えるからこそ、「周りにあるものを自分の身体として使うこともできるだろう」という発想につながり、MELTINのビジョンである「創造性の最大化」のための「精神」「身体」「環境」の3つが揃うことになります。また、アバターという発想もその中で生まれてきました。
人間がサイボーグ化することに対して問題があるとは思いませんし、ピーターさんの行っていることは現実的で共感できます。一方で、僕がそれを実行しようとしたときに、周りの人からそれを問題視されるだろうなとは思っています。
そのために、国際サイボーグ倫理委員会などを作って、カンファレンスイベントを開催したり、未来が到来したときの思考実験を行ったり、ISOの国際ワークショップや、その他講演会で情報発信を行っています。その中でサイボーグ技術とは何かという定義をして普及させていくところから始める必要があると考えていて、事前に打てる手を打つ活動をしています。
人間がいちばん拒絶するのは、「なにか得体の知れない未知のもの」です。ですから、正しい知識を持ちさえすれば、それとどう関わっていけばよいのかはおのずと見えてきます。
ここから先は、サイボーグ技術が次第に現実味を帯びて社会に進出してくるフェーズになっていきます。そのため、中には誤った使い方をすることで、サイボーグに対する危機感が社会の中で大きくなってしまうリスクがあります。ですから、国際規格化や周知活動、倫理観の醸成といった、非技術的な社会的な活動と一体になって進めることが大事だと考えているのです。
ピーターさんは、病気を克服するために新しい人間の姿になった。僕は、現状の身体では宇宙を解明できないという課題を克服するために新しい人間の姿になる。自分のやりたいこと、願いを実現するために自分を変えていくというところには、違いはありません。
そもそも「健常者」「障害者」は、人間が勝手に定義しているだけで、そこを区分けすること自体がナンセンスなのではないかと僕は思います。自分がやりたいことを実現できるか否かの問題であり、身体的な特徴で分類されるものではないと思っています。
MELTINはサイボーグ技術の実現を通して、そういった思いを持つどんな年齢、どんな身体の人でも、自分のやりたいことができる、そのための選択肢を提供できる会社になりたいと思っています。
選択肢の提供というところが重要であり、すべての人がサイボーグ化するのを強要するのではなく、ピュアな人間でありたいという人もいます。でも、希望する人には、それが届く世界にしていきたいですね。
(構成:泉美木蓮)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら