直木賞作家「サイボーグが書いた純愛物語に快哉」 相手に「忘れる」幸福を許さぬ「傲慢な愛」の本質
問答無用のラブストーリー
人間は、人生に一度はいい小説を書けると言われています。ピーター・スコット-モーガンさんは、まさにそれを『ネオ・ヒューマン』で体現されたと思います。
この作品は、ノンフィクションでありながら、実録、私小説、フィクション、いろいろな要素が入っています。そこにロボット工学者としての専門知識もふんだんに織り込まれており、なおかつ「難病になっても、こういう延命方法がありますよ」という提示にもなっています。
手塚治虫の漫画『火の鳥』を思い浮かべました。火の鳥をつかまえて、その生き血を飲めば永遠に生きられるとみんなが思っている。ピーターさんの技術は、まさに「火の鳥の生き血」のようですし、人間の考えることは、太古の昔から変わっていないのだともわかります。もし、いま手塚さんが生きていたら、『ネオ・ヒューマン』のようなAIの世界を描いたのではないかとも思いました。
そして本書は、物凄い頭脳を持った人が書いた「純愛物語」だと私は受け取りました。ピーターさんは、恋人のフランシスさんに対してつねにストレートな愛情を向けていて、人間関係にありがちな無駄な考え方を一切しません。
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