なぜ総菜盛り付けに特化?専用ロボ開発の舞台裏 働き手いない問題にロボ開発で挑むエンジニア

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──食品加工の仕事をロボットが行えるようになると、「労働力不足」の解消のほかにどんなメリットがありますか?

まずは衛生面ですね。ロボットには体毛がありませんから、毛の混入などのリスクは避けられます。それに、生体由来の細菌を持ち込むことはありません。人が食材に直接触れるタイミングをなるべく減らすことで、食品の消費期限を延ばすという取り組みにもつなげられると期待されています。

また、コロナ禍の今は工場の三密回避も課題。そこで、ロボットを人と人の間に設置することで自然にソーシャルディスタンスをとれることも、最近になって注目されています。

さらに、社員の急な病気や育休などによる「一時的な人員不足」にも、『Foodly』は対応しやすいと思います。

「Work with Robot」から「Life with Robot」へ

──野村さんはもともと趣味でロボット開発をしていたわけですが、ロボットづくりが仕事になってどのような変化を感じますか?

ただ楽しみでやっていたロボット開発とは違い、「社会にいい影響を与えられている」という実感が持てるのは仕事として取り組むからこそですね。

以前、食の技術の展示会『FOOMA JAPAN』(フーマジャパン/国際食品工業展)に出展した際、『Foodly』を見た来場者から「こういうロボットが社会にとって必要だ」「未来のロボットのあるべき姿」といった言葉をいただいたことがありました。「労働力不足」という国全体で解消すべき課題に自分が貢献できていることを実感できて、とてもうれしかったです。

一方で、まだまだ先が長いことも感じています。将来的には『Foodly』のような人型協働ロボットをもっと社会に普及させたいと思っていますが、それは私個人や当社だけで実現するのは難しく、ロボティクス業界や社会全体で取り組んでいくべきことだと考えています。

先日、経済産業省が、人出不足が深刻な施設管理、小売・飲食、食品製造の3分野において、ロボットフレンドリーな環境構築を目指す「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」をスタートさせました。日本惣菜協会が事業を執行しており、当社も研究開発の一部を請け負っています。

今後は、こうした国が推進する事業の普及も、ロボットの浸透を後押ししてくれるのではないでしょうか。

──改めて、野村さんが感じるロボット開発の魅力とは?

Webサービスやアプリの場合、開発した結果は画面上に写されますよね。でも、ロボット開発の場合は自分の書いたコードで「現実のもの」を動かすことができる。これこそがロボット開発の唯一無二な部分で、大きな醍醐味だと思います。

また、『Foodly』のような人型ロボットには愛着も湧きますよね。アールティで働く社員全員が、「ちゃんと育ててあげなくちゃ」とわが子のように『Foodly』をかわいがっています。

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