なぜ総菜盛り付けに特化?専用ロボ開発の舞台裏 働き手いない問題にロボ開発で挑むエンジニア

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もう1つのこだわりは「安全・安心」への配慮です。

『Foodly』は食品工場のほか、スーパーの厨房などでの活躍も想定しています。そうした現場はスペースが狭く、人とロボットの肩が触れ合うほど近い距離で作業を行わなければなりません。

従来のロボットだと、人とぶつかってケガをさせないように、柵で囲ったり、近くに人がいる間は仕事を止めて待つようにします。

人とぶつかっても衝撃を少なくするため、各モーター部にトルクと位置のハイブリッド制御を取り入れている(写真:エンジニアtype編集部)

しかし『Foodly』は人などがぶつかった場合でも衝撃に逆らわずに力を逃し、かつその後もスムーズに作業を再開できるように設計されているんです。ですから、ロボットと人の間に柵を設けずとも、事故が起こりにくい。また、現場からの強い要望で「ロボットの都合でラインを止めない」こともこだわったポイントです。

また、食品工場やスーパーの厨房では、性別だけでなく国籍や文化圏の異なるさまざまな人が働いています。どんな方が目にしても親近感を持ってもらえるように、大きさやフォルムに至るまで、ビジュアルを1から設計しました。

操作はパネルのボタンを押すだけでOK

『Foodly』は身長約150cm、肩幅約40cmと、圧迫感のないコンパクトなサイズに設計され、全体的に丸みを帯びたかわいらしいフォルムにもこだわっている。下部にキャスターがついており、移動も簡単だ(写真:エンジニアtype編集部)

──非エンジニアが操作することを考えると、操作性などにも工夫が必要ですよね。

仰るとおりです。流れてくる食品が変わるたびに現場の方にプログラムや数字の設定を調整していただくわけにはいきませんから、使い方をできる限りシンプルにすることを追求しました。

Foodlyをコンベアの前に移動させたら、操作パネルで「唐揚げの盛り付け」のボタンを押すだけでOK。腕の動かし方や力加減はあらかじめ当社でティーチングをしており、現場では内蔵してあるプログラムで自動的に計算します。

『Foodly』の操作画面。直感的に操作できるシンプルなデザインだ(写真:エンジニアtype編集部)

『Foodly』のビジュアルや操作方法は、エンジニアが工場へ行って現場を見ることで生まれ、今も現場を見て日々アップデートを重ねています。「現場百回」という言葉のとおり、エンジニアが自分の目で現場を見なければわからないことがたくさんあります。

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