そこへ今回の「無料化」である。これで、無症状であっても誰でも、いつでも自由にPCR検査をタダで受けられるようになる……という期待は甘いかもしれない。
政府案で無料化の対象とされているのは、
① 健康上の理由等でワクチン接種を受けられない者(予約不要、2021年度限り)
② 感染拡大の傾向が見られる場合、都道府県の判断で、ワクチン接種歴を問わず希望者
となっている。
一見、至極当然で合理的に映るかもしれない。だが、この2つの条件を具体的に読み解くと、国が施策の肝心な部分に曖昧さを残していることもわかってくる。
ワクチン「打てない」は10万人に1~2人
①については、ワクチンを打てないならば感染リスクは高くなるので、PCR検査を無料で受けられて当然にも見える。
ではどんな人が、新型コロナワクチンを健康上の理由で「打てない」のだろうか。
アメリカCDC(疾病対策センター)は、新型コロナワクチンは「基礎疾患のあるほとんどの人」に「打つことができる」とし、むしろ接種を推奨している。特定の基礎疾患を持つ成人は、年齢によらず、新型コロナの重症化リスクが高いためだ。
新型コロナワクチンの添付文書を見ても、接種を「行わないこと」とされているのは、ファイザー製とモデルナ製いずれも「初回接種」時に「ショック、アナフィラキシー」が現れた者だけである。
これはmRNAワクチンに含まれるポリエチレングリコール(PEG)という成分に対し、急速に重篤なアレルギー反応が起きたものと見られている。
厚労省によれば、8月22日時点の国内推定接種回数は、ファイザーが約1億181万回、モデルナは約1650万回。それまでに医療機関から報告された「アナフィラキシー疑い」は、ファイザーが2091件(0.002%、10万人あたり2人)、モデルナで280件(0.0017%、10万人あたり1.7人)だった。
というわけで本来、新型コロナワクチンを健康上の理由で「打てない」人は、10万人に1~2人程度しかいない。感染拡大局面と判断されない限り、無料PCR検査の対象になる無症状者は原則10万人に1~2人だけ、ということだ(しかも来年3月までの期限付き)。
ただ、実際の運用はずっと“なあなあ”になるはずだ。文言にからくりがある。「健康上の理由等」の「等」が“仕込み”で、解釈次第で「打てない」ではなく「打ちたくない」人まで含むことも可能になる。
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