インフルワクチン打たない人に迫る3つのリスク 流行しなかったことが感染リスクを高める皮肉
「感染対策をしっかりしているから、今年もインフルははやらないね」「この夏、南半球でインフルははやらなかったから、日本にも入ってこないよ」――多くの人が期待を込めてそう楽観していることと思う。実際そうなるのかもしれない。
この冬、インフルエンザが国内流行するかは、正直言ってしまえば未知数だ。それでも今、インフルワクチンを打てる人は打っておいたほうがいい。おすすめする理由は3つある。
「殺人インフル」の早すぎる流行
打たなかった場合の不安要素は確実にある。ひとつが、ヨーロッパでのインフルエンザウイルスの不穏な動きだ。
欧州疾病予防管理センター(ECDC)の10月26日発表によれば、クロアチアではすでに例年のこの時期を上回る患者数が報告されている。この時期の流行は「異常に早い」という。
しかも過去1カ月間にヨーロッパで報告されたインフルエンザは、主にA香港型(H3N2)ウイルスだ。インフルの中ではかなり厄介な部類である。
A香港型は「激症型」とされ、これまでにパンデミックや変異を繰り返し、死者も多い。典型例は、1968~1969年に香港から世界に広がった通称「香港かぜ」だ。
アメリカCDC(疾病予防管理センター)によれば、「香港かぜ」は全世界でおよそ100万人の死者を出した。アメリカでも約10万人が死亡し、そのほとんどが65歳以上の高齢者だった。高齢者の場合、やはり肺炎が死亡に直結してしまう。
日本でも、1994~1995年の流行ではA香港型が中心となった。今とは統計の取り方が違うので比較はできないが、国立感染症研究所によれば、このときは定点医療機関(小児科・内科)から報告された患者数が、1987年の集計開始以来、最高に上った。
直近でも、2017年のオーストラリアでのインフル大流行の際、主犯格がA香港型だった。深刻な広がりを見せたビクトリア州では、感染者の42%をA香港型が占めた。この年オーストラリアではインフル死亡者が前年比2.7倍となり(464人→1255人)、A香港型は「殺人インフルエンザ」と呼ばれた。犠牲者の多くが高齢女性で、基礎疾患を抱えていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら