インフルワクチン打たない人に迫る3つのリスク 流行しなかったことが感染リスクを高める皮肉

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当然ながら、その他のインフルと同じくA香港型でも発熱、のどの痛み、鼻水、胃腸炎、気管支炎、肺炎、関節・筋肉痛、角膜炎・結膜炎といった症状が一般的だ。だが、1994~1995年はそれに加え、「インフルエンザ脳症」などの中枢神経系疾患や循環器障害が、過去12年間と比べ多く報告されたという。

インフルエンザ脳症は、インフル感染をきっかけに免疫異常が起き、脳の動きに急激に異常が生じ、神経障害や意識障害に至るものだ。10歳未満の子どもたちで発症リスクが高く、乳幼児では亡くなるリスクも高い(国立感染症研究所)

流行しなかったことが感染リスクを高める皮肉

もう一つの不安要素は、昨シーズンにインフルエンザが「流行しなかった」ことだ。

冒頭の楽観論と矛盾するようで理解しがたいかもしれないが、要するにウイルスとの接触がなければ、私たちのインフルに対する免疫力は着々と低下していく。臨戦態勢が解かれて手薄になり、その分、今そこにいる敵に向かって免疫システムが発動されるためだ。

昨シーズン、インフルエンザは1999年に現行方式で記録を取り始めて以来、初めて「流行なし」となった。この数字は、例年の1000分の1だ。

具体的には、国立感染症研究所の「季節性インフルエンザの受診患者数」の推計を過去3シーズン分さかのぼると、2019年秋~2020年夏は約729万人、2018年秋~2019年夏は約1170.4万人、2017年秋~2018年夏は約2209万人であり、単純平均で1シーズン1369.5万人だった。それが一気に1万人台へ減少したのである。

やはり新型コロナを機に飛沫感染や接触感染への対策が徹底されたことによるのだろう。緊急事態宣言の解除後も生真面目にマスクを標準装備し続ける日本人ならば、今年もインフルとは無縁で済みそうにも見える。

だが、そこに落とし穴がある、というわけだ。

例えば今夏のRSウイルスの大流行は、その懸念が現実になったものだ。

RSウイルスは、赤ちゃんを中心に風邪の原因となり、2~3割に気管支炎や肺炎、まれに急性脳炎を引き起こす。日本では昨年は前年比9割減となったのに対し、今年は7月末までに2018年・2019年の年間患者数を上回った(しかも欧米や南米でも同じ現象が見られた)。

注目すべきは、2歳以上の患者数が大きく増加したことだ。国立感染症研究所によれば、2018年・2019年の平均と比べて今年の報告数は0歳で0.58倍、1歳は0.95倍と減少したのに対し、2歳は1.83倍、3歳は2.44倍、4歳以上では2.64倍となった。

昨年、乳児で感染を経験せず、免疫を獲得できていなかった子どもたちが、今年になって初感染しているせいに違いない。

新型コロナの患者数が大きく減少した国々では、国内外の往来を正常化させつつある。日本政府も水際対策を緩和し、ビジネス目的の入国者の待機日数を10日から原則3日に短縮する見通しだ(11月2日時点)。

こうした動きは、くすぶり始めたインフルエンザウイルスの往来を自由にするものでもある。免疫力が低下しているところに持ち込まれれば、感染は免れない。

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