例えば、「もともとアレルギー体質で不安なので、接種は受けていない」という人もいるだろう。これについては、アレルゲンが新型コロナワクチンに無関係であれば、接種によってアナフィラキシーのリスクが高まることはないとされている(BMJ)。厳密には「打てない」には該当しないが、「等」の範囲内に収まりうる。
対象者の範囲が広がることは歓迎すべきだが、結局、それを誰がどう判断するのかは、まったく説明されていない。
こうした国の意図的な曖昧さには、既視感がある。かつてのHPVワクチンに関する与党や厚労省内のワクチン反対派への忖度だ。及び腰になった国が不作為を続けた結果、日本はHPVワクチン後進国となり、国民はHPV由来がん(子宮頸がんなど)のリスクにさらされ続けた。
感染拡大するまで気づかないシステム
②の問題点は、「感染拡大の傾向が見られる場合」というところだ。
単純な話、感染拡大の「傾向」をどうやってキャッチするというのか。新型コロナの大きな特徴は、陽性でも無症状の人が多く、なおかつ感染源となることだ。症状のある人が目につくようになった頃には、すでに感染が十分に拡大している。
特に日本では、新型コロナワクチンの2回目接種率も70%に達しようとしている(内閣官房、11月11日時点)。ワクチンは感染を完全に防ぐものではないが、接種者は発症率が下がる。つまり感染しても無症状となる可能性が高まる。
ワクチン接種の進展により、感染拡大の兆候を捉えることがさらに難しくなっているのだ。
感染拡大傾向をいち早く察知するには、無症状の人々が日常的に、積極的にPCR検査を受けられる体制を整えるしかない。
ちょっとした体調不良や心当たり(人込みに出かけたから……etc.)で気軽に、プライバシーが守られるかたちでPCR検査を受けられれば、感染状況の適切な把握に近づくだろう。
さらにこの②の条件には、もう1つひっかかる部分がある。「都道府県の判断で」という点だ。ここにも国の判断回避の姿勢が表れている。
もちろん表向きは、地域ごとの「感染拡大傾向」の状況に応じて、と読める。たしかに一律の基準を示す必要はない。だが、実務に即して考えてみると、自治体に丸投げしているだけだと気づく。
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