残念!ランチで「うまい寿司」が食えない理由 ヤバい「1万円高級寿司」の裏側【後編・完結編】

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ランチはフツーにおいしいが感動はない

河岸:う~ん、そこは別に考えたほうがいいかな。高級寿司もランチは所詮ランチだから。「ディナーとは別物」と思ったほうがいい。今日、カウンターで握ってもらったものと同等のものがランチで出てくるとは限らないよ。

N君:実は、この記事を書くに当たって、後日あらためてランチに訪れたんですよね。ウニやマグロ、トロも入った3500円のセットを頼みましたが、やっぱりディナーほどの感動はなかったですね。値段も3分の1だけど、感動も3分の1みたいな。普通においしいですが、そのレベルなら、おいしい回転寿司の中にもいくらでもあるというか。

河岸:もちろん連載でも取り上げた「ヤバすぎる某100円寿司」と比べたら、やっぱり高級店の3500円のランチはおいしいと思うよ。だけど、ディナーのおいしさをランチに求めることはできない。

N君:具体的には、ランチとディナーで何が違うんですか?

河岸:ネタも違えば、作り方も違う。たとえばウニは昼夜両方食べたけど、夜はちゃんとミョウバンを使わない塩ウニだったけど、ランチはミョウバンを使ったウニだった。あと、寿司の作り方も違ったことに気づいた?

N君:いや、食べることと会話に夢中で全然(笑)。

河岸:仕事なんだから(苦笑)。ランチは忙しいせいか、仕事を効率化するために、目の前の職人さんが軍艦なら軍艦だけを作っていたでしょ。隣の職人さんは、自分の担当するネタだけを握って、それを寄せ集めてお皿に載せて出していた。でも、ディナーは、目の前の職人さんが、自分たちが食べるものだけを作ってくれたでしょ。

N君:確かに、ランチのときに、目の前で作っているウニが「こっちに来るのかな」と思ったら、ほかのお客さん用でがっかりしました(笑)。

河岸:さっきも言ったけど、寿司は目の前で握ってもらったものをその場でひとつずつ、すぐに食べるのがいちばんおいしい食べ方なの。ランチのセットやディナーでもテーブル席みたいに、一度に全部お皿に並べてもらったものを時間をかけて食べると、同じ寿司でもおいしさは半減してしまう。

N君:なるほど。ランチはコスパはいいけど、夜に来てもらうための宣伝的な意味もあるんでしょうね。

河岸:ランチはお得だけど、やっぱり所詮はランチ。「それなり」で値段相応だよ。だから本当の高級寿司では、昼も夜も同じ中身で値段も大差なかったりする。1人1万円クラスの店なら、ランチはうまい回転寿司と大差ないことが多いと思う。もちろん「うまい回転寿司」という条件はつくけどね。

寿司職人にとっていちばん難しいのは「会話」

河岸:寿司屋のディナーはある意味、目の前の職人さんを1時間なら1時間、独占するわけなの。だから、それなりの値段を払うし、会話も楽しむ。

N君:確かにランチの場合は、さっと食べて、それでおしまいですよね。

河岸:寿司職人にとって、会話は非常に重要だからね。「寿司職人にとっていちばん難しいのは会話、2番目に難しいのはシャリ、3番目に難しいのはネタの扱い方」という人もいるくらいだから。

N君:確かに、前の前で料理人が作ったものをその場でゆっくり食べるスタイルは、ほかの外食ではめったにありませんね。牛丼やラーメンはさっと食べて出るだけで、お兄さんと話しながら食べることって、普通はありませんし(笑)。

河岸:寿司とお酒のBARくらいじゃないかな。あとは天ぷらの高級店もそうかな。それくらい、寿司職人にとって会話は重要だし、難しいもの。感じが悪い職人だと、食べ物もおいしく感じないし、そんな寿司屋には二度と行きたいとは思わないしね。

N君:逆に言うと、回転寿司はそういうのがない分、気軽に食べられるって側面もありますよね。この店ではないですが、僕みたいに町の寿司屋で「うなぎ、ください」と言って、「うちは寿司屋だよ」とバカにされることもありませんし(笑)。

河岸:回転寿司は、隣の客に話しかけられることもないからね。逆に言うと、今日話した「寿司や刺身の食べ方」なんかは、昔は隣の客のおじさんが教えてくれたもんなんだけどね。そういうのがなくなったよね。

N君:確かに……。いずれにせよ、寿司職人が握った本物の寿司は高いけど、それだけの価値がある、今日の店はそれを教えてくれました。いや、ちょっと僕、感動しちゃいました。おカネを貯めて、またこの店に来ます!

次ページ次回は「ウマすぎる人気回転寿司」を実名紹介!のはずが…
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