日本とフランス「ピル」への考え方はこんなに違う コロナ禍には処方箋なしで買えるようになった

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エマニュエル:1970年代以降は、ピルは保険で払い戻しができるから避妊にかかる費用はそれほどかからないというのは、フランスにおける避妊に関する政策の根幹であるからね。

また、フランスではアフターピル(緊急避妊薬)も保険での払い戻しが可能だ。これはピルを飲み忘れて避妊に失敗したときなど、妊娠の危険がある場合にのみ服用するピルだ。

僕の周りで、男性がピル代を払うという話はあまり聞いたことないんだけど、ありえない話ではないと思うよ。カップルの生活において避妊の費用は2人で分担するものと考えられているから、女性がコンドームを買うというカップルだっているだろうね。

来年から25歳以下の女性はピルが無料に

くみ:そして、女性側が望まない妊娠を回避できる手段として当然の権利をさらに支援するとして、最近もピル関連のニュースがあったね。「来年から25歳以下の女性はピルが無料」という政策が発表された。

年間約1万2000人の未成年の中絶件数を減らすため、2013年の時点ですでに15〜18歳の女性にピルは無料になっていたのが、25歳まで広げられるということだよね。学生や、まだ稼ぎの少ない若い人にとって助かると思うし、この部分についてはフランスの政策は本当に心強いと感じる。エマニュエルはこのニュースを聞いてどう思った?

エマニュエル:さっきも話したように、2012年のピル騒動以降、ピルの使用が最も頻繁なのが若者世代であり、この世代により避妊を促進させるには無料化の年齢引き上げはとても効果的だと思う。

日本は、ピルの認可はフランスより25年遅れて1999年だ。でも、まだ避妊目的のピルの使用はそこまで普及してないよね。この日本とフランスの違いは、もちろん文化的な違いの側面もあるけれど、公共政策としてピルの全額、または一部の払い戻しを保証することで、ピルが安価に手に入れられるようになり、その使用が一気に広まったことが大きな原因だろう。

くみ:最近もフランスで河瀬直美監督の『朝が来る』を観て、未成年の望まない妊娠と、それによって引き起こされる、社会的な制裁のようにも思えるまだ若い妊婦が遭遇するさまざまな試練について考えさせられた。改めて、きちんとした性教育を早くからすることと、安全な避妊の知識に誰もがアクセスできることが重要だなと思った。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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