戸田恵梨香・水川あさみの抗議が映すメディアの影 これほどの強い言葉がつづられたのは一体なぜか

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スマホの普及で小学生から高齢者までがネットニュースにふれられるようになった今、谷原さんと兼近さんのスタンスがどこまで通用するのか、時代に合っているのかと言えば疑問を抱かざるをえません。さらに、「芸能人の中にも2人のような考え方の人がいることが、週刊誌やタブロイドの姿勢が変わりづらいことにつながっている」ことも悩ましいところです。

週刊誌の編集部員と話していると、「以前はスタッフやエキストラで撮影現場に潜入取材させられていたけど、最近はしなくてもよくなった」「『張り込みや盗聴・盗撮はやりたくない』と言って了解してもらっている」などの話を聞いて変化を感じることがあります。しかし、記事内容についてはあまり変化を感じず、芸能人たちは泣き寝入りのような状態がまだまだ続いていることも間違いありません。

上野樹里からの切なるメッセージ

上野樹里さんは前述したツイートに続いて、「人の不幸は蜜の味と言うように、悪いニュースを見たい人の心が世の中を作ります。そのワンプッシュで広告代が入ります。応援したいですか、したくないですか?どんな世の中を生きたいですか。あなた次第です」とつづっていました。

つまり、「人の不幸を見たい人がいるから、このような週刊誌やタブロイドの記事が生まれてしまう」「そういう人が記事を読むことで週刊誌やタブロイドが稼げてしまう」と言いたいのでしょう。上野さんの言うとおり、不幸を書いた記事を読んでしまう人や、それを事実と信じたり拡散したりする人がいることも、問題の1つなのです。

さらに上野さんは、「人の不幸は蜜の味と感じる人は、自分が不幸せだというバロメーター。自分はマシだと慰める。そうやって他に問題があるのに誤魔化す。だから改善されない現実のループ。もし、みんなが幸せなら、人の不幸は涙の味。悲しくて皆で祈りを捧げるでしょう」という気づきをうながすようなメッセージもつづっていました。

他人ではなく自分の人生に目を向け、自分を幸せにすることを優先させれば、今回のような記事は需要が減っていくでしょう。そんな社会の実現は容易ではありませんが、「週刊誌やタブロイドが悪い」と一方的に糾弾しているだけでは何も変わっていきません。特に今回の記事をクリックして読んだ人は、「次からは読むのをやめてみようかな」という意識に変えることからはじめてもいいのではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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