戸田恵梨香・水川あさみの抗議が映すメディアの影 これほどの強い言葉がつづられたのは一体なぜか

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私のもとには毎週さまざまな週刊誌や系列のウェブサイトからコメント依頼の連絡がきますが、実際にはきちんと取材しているまじめな編集者やライターも多く、読み応えのある記事もたくさんあります。しかし、それらの大半はいわゆる“数字を稼げる記事”ではありません。週刊誌としてはビジネス上、「紙の本誌を売り、ウェブのPVを稼ぐための記事が必要であり、それをゴシップが担っている」という事情があるのです。

なかでも昭和、平成のころから「数字が稼げる」と週刊誌業界で言われてきたのが、“女の戦い”。1999年から約3年間にわたって報じられた「ミッチー・サッチー騒動(浅香光代さんと野村沙知代さん)」を見ても、そのことがわかるでしょう。作り手たちが「その発想から令和の今も抜け出せていない」ことが問題の1つなのです。

そして、週刊誌やタブロイドの芸能記事を語るうえで、その前提として挙げておかなければいけないのは、売り上げ減とデジタル移行の遅れ。紙の売り上げ部数が落ちる中、読み放題のサブスクリプションでは売り上げが足りず、ウェブ版を作ったものの十分な広告収入を得られている編集部はごくわずか。「まずはPVを稼いでまとまった実績を作るところからはじめなければいけない」ため、どうしても過激な見出しの芸能記事に頼ってしまうところがあるのです。

その「売り上げ減」と「ウェブ版で稼げない」ことは、フリーの編集者やライターに安価な報酬で仕事を任せることにつながり、質の低下に直結。薄利多売するしかない作り手たちは、推察や悪意をベースにした記事を量産しやすい状況に陥っているのです。

雑誌記事をウェブ版にそのまま流用

もう1つ今回の騒動で挙げておかなければいけないのは、雑誌記事のウェブ版流用による弊害。戸田さんと水川さんの不仲を報じたウェブ版の記事は、「戸田恵梨香、“精神的な不調”報道のウラで親友・水川あさみとの間にできていた距離」でしたが、雑誌記事のほうは「戸田恵梨香 心に突き刺さった500日間の“喪失”」でした。

ちなみに本文はウェブ版のみ3本の見出しを追加しただけで、中身はまったく同じ。どちらも過激な見出しであることに変わりませんが、「人気者2人の不仲」と「精神的な不調」を前面に出したウェブ版のほうが強烈であり、「これくらいしなければPVが稼げない」という切迫したものを感じさせます。

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