中国の“低賃金”は終わりつつあるのか--リチャード・カッツ
中国経済は大きな転換点に差しかかっているのかもしれない。ホンダや台湾企業のフォックスコン、そして、中国の多くの主要企業で起こったストライキは、マッチのように燃え上がったが急激に消えてしまった。しかし、労働者が労組を結成し、賃上げを求め続けるならば、今後も注意を要する。
政治的な面では、労働者が中国共産党支配の中華全国総工会(中国の労組の全国連合組織)から決別することを意味する。それは、1980年代末に韓国で起こったストライキと同じように、中国の民主化にとっても重要な動きとなるだろう。
経済的な面では、中国のGDPに占める賃金のシェアの長期的な低下が逆転することを意味する。問題は、25%から30%の賃上げが一部の大手輸出企業を超えて一般企業に広がるかどうかだ。
世界銀行によると、中国ではGDPに占める賃金のシェアは83年の56%から2005年には37%まで低下している。特に過去10年は下落幅が大きい。経済学者のニコラス・ラーディによると、修正された統計ではシェアの低下はより小幅だったが、低下自体は現在でも続いているという。
こうした傾向は中国に限ったものではない。急激に開発が進んだ他の国でも同様だ。たとえば、日本では国民所得に占める農家と労働者の合計所得のシェアは、55年の73%から70年には55%にまで低下した。経済成長が始まると、賃金は急速に上昇するが、GDPの伸びほどではない。他方、企業の利潤はGDPの成長率よりも早く増え、利潤はさらに急速な成長を促進するための投資資金に充当される。