中国の“低賃金”は終わりつつあるのか--リチャード・カッツ


 しかし最終的には、需給の法則が為政者の定めた法律よりも強く働く。労働者の需要が供給を上回れば、労働者の交渉力は高まる。それが日本や韓国で起こったことであり、中国でも必ず起こるだろう。問題は、そうした事態が現在起こっているのか、これから起こるのかということである。

出稼ぎ労働者の不満が社会不安の温床に

経済発展の初期に賃金が下落する要因は、農村から大量の出稼ぎ労働者が都市に流入することにある。それが、低賃金を受け入れる労働者の超過供給をもたらす。だが、最終的に流入は鈍化し、労働者の交渉力が高まる。日本では、それが70年代初期に起こり、GDPの成長率を上回る賃上げをもたらした。その結果、国民所得に占める賃金のシェアは再び上昇に転じた。

中国では、依然として農村部から沿海の都市部への出稼ぎ労働者の流入は続いているが、エレクトロニクスなどの製造業は熟練労働者や半熟練労働者の不足を嘆いている。

その一つの理由は、しだいに高度化する都市部の企業のニーズに、農村地域の教育が追いつかなくなっていることだ。もう一つの理由は、中国の一人っ子政策である。00年から05年の間、15歳から24歳の人口は約2000万人増えたが、05年から10年の間では100万人増えたにすぎない。さらに10年から15年の間には若年労働者は2000万人減り、15年後には総労働力が減少し始めると予想されている。

企業側の労働需要が増加する一方、それを満たすだけの教育を受けた若年労働者が存在しないのである。若年労働者は別の不満も抱いている。一人っ子政策で女児の死亡が増加した結果(編集部注:男児を好み、女児は中絶する傾向がある)、若い男性の結婚相手となる女性の数が少なくなっているのだ。ホンダの工場でストを始めたのが、23歳の未婚の出稼ぎ労働者だったのも、偶然ではないのかもしれない。

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