豚汁だけで50種類!大人気「スープ作家」の凄み 有賀薫氏が切り開くスープという無限の可能性

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「食材、油脂、味つけ、出汁の順列組み合わせで、レシピは無限に生まれます。食材は、うま味が出るものとそれ以外を組み合わせます。食材からうま味が出る場合は、出汁なしで作ることも多いです。出汁を使う場合は、カツオ節、煮干し、昆布、シイタケ、コンソメ、鶏がらスープなどの選択肢があります。油脂はオリーブオイル、ごま油、バターのどの油脂を使うかでもガラッと雰囲気が変わる。味つけも醤油、味噌、塩と、変えていくと同じ食材でも違うスープになります」と有賀氏。

スープを作ったら息子が起きて食べるように

有賀氏がスープを作り始めたのは、10年前に受験生だった息子が朝、なかなか起きてこなくなったことがきっかけ。スープを作ったら、息子が起きてきて食べた。そこで毎朝レシピを変えて作り、スマホで撮ってSNSに投稿すると、反応が返ってくる。

面白くなって続けるうち、欲が出た。食と生活に関するプロデューサーのツィッター仲間のアドバイスを受け、スマホで撮った365日のスープをカレンダーにまとめ、展覧会を開いた。やがて書籍化の話が持ち上がり、あちこちの出版社に提案したうえで、SBクリエイティブで刊行が決まった。そこからはとんとん拍子。

料理はもともと好きだった。少女時代は専業主婦の母が毎月取っている『暮しの手帖』を読み込み、料理好きの父が使う丸元淑生や大阪ロイヤルホテルのレシピ本なども読んだ。料理エッセイ、食のノンフィクション、辻調理師専門学校の創立者、辻静雄の本なども読み漁っている。

読み込んできた数多くのレシピと、若い頃から料理好きで工夫してきた主婦としての蓄積が、アイデアの源泉だ。

「料理教室にも2年通ったけれど、専門学校に行ったわけでも、飲食店の厨房に入ったことがあるわけでもない。レシピ本などを通して、頭で料理を覚えてきたと思います。最近は、ユーチューブでシェフの料理動画を観ています」(有賀氏)

話題の料理人、料理家の仕事への目配りも欠かさない。大阪で最初にミシュランで三つ星を取った、斬新な料理を出すイノベーティブのレストラン「ハジメ」や、同じくイノベティブで話題の京都の「ルーラ」、SDGsへの取り組みで知られる東京・青山の「ザ・バーン」、里山料理で知られる「ナリサワ」へも行った。

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