豚汁だけで50種類!大人気「スープ作家」の凄み 有賀薫氏が切り開くスープという無限の可能性
ところが、豚汁レシピは大歓迎された。「『この手があったか』という感じなのでしょうね。豚汁は根菜を何種類も入れる1種類しかない、と思っていたのにこんなにレシピが多彩にある。作ってみておいしかった、という声は今までの本で一番多いかもしれません。くり返し作っている人もいます」と有賀氏。
ウケた要因を、有賀氏は「スープはご飯に合わない、と思っている人たちは意外に多い。塩味や薄口醤油味はパンチが足りない、おかずにならないという人たちがいるけれど、味噌なら合うと思ってもらえる。味噌には臭み消しの効果もあるし、いろいろな味をカバーします。そして、失敗しにくい」と分析する。
刊行の動機を、「豚汁は国民食だと思うんです。だけど、外食ではあまり食べられない。そのうえゴボウやサトイモがあまり売れていない、カレーもルウよりレトルトが売れるといった時代を考えると、手間がかかる従来の豚汁は家庭でも、あまり作られなくなっていると思います」と話す。
70~80種類の豚汁レシピを作った
それにしても豚汁のレシピが50個とは。有賀氏はどのように考案しているのだろうか。
「去年の夏、毎朝の日課にしているスープ作りで、野菜1つと豚と味噌だけでどれだけ作れるか試してみたんです。そしたら、できるわできるわ。70~80種類は作ったでしょうか。だから本になるなと思いました」と有賀氏。
「レシピは、例えば食材の組み合わせ方だけでなく、素材の味の引き出し方も工夫できる。肉は最初に入れるのがおいしいのか、中盤か、最後か。鶏むね肉や薄切り肉なら、野菜でギリギリまで味を出して最後に入れたほうがおいしいんじゃないか、などと考えます」
有賀氏のレシピに出汁の出番が少ないのは、『スープ・レッスン』の連載をウェブマガジンで始めたとき、独身男性の読者が多かったことによる。出汁を引くからスタートするとハードルが高くなる、と考えたのだ。
出汁なしのレシピを工夫するうち、さまざまなアイデアが生まれた。漬物からもうま味が出る。麦茶でも出汁にできるのではないか。ならばウーロン茶や煎茶、ほうじ茶はどうか。結果的にお茶は麦茶のみとしたのは、煎茶は渋くなるなどほかのお茶は難しかったからだ。
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