家は「中古」がいい!住宅を蘇らせる再生請負人 空き家もリフォームすればお得な物件になる?
――潜在的な売り物が溜まっているだけ、ということですか。
ワクチン接種が進めば、売り物が出てくる。その傾向は足元ですでに出ている。実際、仕入れは2020年10~12月期が前年同期比3%増、2021年1~3月期同15%増、2021年4~6月期同30%増と、順調に回復している。
――中古住宅には“お化け”が出るという言葉がありますね(笑)。外見は良くても、内部をよく見たらひどい状態だった、ということがあると聞きます。
空き家の買い取りを始めた当初は、すごく失敗が多かった。前身のやすらぎ時代に仕入れていた競売物件は、落札するまで中が見られないという制約はあるものの、裁判所がある程度、調査を済ませていた。そこで競売物件と同じ感覚で、どんどん仕入れていた。ところが、開けてびっくり。壁をはがしたらシロアリだらけで、リフォームそのものができない。雨漏りで柱が腐りかけ、屋根をふき替える必要が出てきて、100万~200万円程度の追加修理では追い付かない、などなど……。
このまま調子に乗って仕入れを増やしていたら、それこそ再び会社が立ちいかなくなる、という一歩手前まで行きかけた。いったん仕入れのスピードを落としてでも調査力を上げないと、赤字物件の山に埋もれると、強烈な危機意識に苛まれた。
ただ、早期にこうした大失敗を経験したことで、逆に強固な買い取りができるようになった。購入手続きに進む前に、シロアリ駆除業者や工務店などと共同して徹底した実査(インスペクション)を行うように改めたのだ。当初はここまで面倒くさいことをしなくても、という不満が現場から噴出。格段に手間はかかるようになったが、品質面が大幅に改善し、現在につながっている。
「新築志向」の意識は変わってきた
まったく新しいことを始めたわけではなく、やすらぎ時代から古い家を再生してきたので、リフォームの勘どころはあった。なかったのは仕入れる際に、こういう調査をやればいいとか、こういう箇所は必ずチェックする必要があるなど、“お化け”の出る場所をあぶり出すノウハウだ。それも場数を踏むにつれ、リスクをコントロールするノウハウが蓄積してきた。
この10年近くの経験が積み重なったことが、同業他社にはない強みとなっている。戸建てはマンション以上に見えないリスク、しかも致命的になりやすいリスクが多い。単に古い家を買って売るだけと思われがちだが、リスクを最小化し、見極める技術が肝になる。外から見ると、簡単に儲けているように見えるが、実際に中古再販をやってみるとなかなかに難しいことがわかるだろう。
――日本は「新築至上主義」がいまだ根強いように感じます。中古市場の現状をどのように見ていますか。
使われるべき空き家が溜まる一方で、新築がどんどん作られていく。大きな矛盾と課題があると感じている。背景には長期的な人口減少の中での、新築の作りすぎがある。アメリカと比べると人口は3分の1なのに、新築は同じくらい建っている。日本は住宅流通に占める新築の割合が多すぎる。
それでも、新築志向という意識は、この10年ほどで変わってきたと感じている。国土交通省が「土地問題に関する国民の意識調査」の中で、新築と中古のどちらを所有したいかの定点観測をしているが、2007年には「新築」と回答した人の割合が7割を超えていたのに対し、直近2020年の調査では初めて5割を切った。流通している中古住宅が全体の2割しかないのに、この意識の変化は驚きだ。
ただし、供給サイドが消費者の意識の変化に追いついていない。
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