築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの顛末 イトーピアがブリリアタワーに生まれ変わる日

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落としどころを探る中で合い言葉となったのは、「満足の最大化より不満の最小化」(林さん)だ。

ワンルーム住戸のオーナーには、年金暮らしの高齢者もいるため、これ以上の負担増は避けたかった。結局、当初は一般分譲価格より有利な価格で増床できる権利を全オーナーに与える予定だったが、ワンルームのオーナーのみに限定。増床できないオーナーからは不満も漏れたが、5平方メートルの増床費用に耐えられず、転出を余儀なくされるオーナーを出さないことを優先した。

想定外の事態はその後も続いた。建て替えが正式に事業化する直前の2017年10月、大規模マンションへ保育所の設置を求める通達が国から発せられた。待機児童解消を掲げる港区からも保育所の設置を要請され、当初の計画になかった保育所の設置スペース確保が急務となった。保育所を設置すれば、やはり東京建物の販売住戸が減る。

さらには法改正によって、外壁材に含まれるアスベストの除去が義務化された。イトーピアの場合、解体工事とは別途、アスベスト除去工事を行うと、工事費は見積もり時点より1億円以上も膨らんでしまう。

配置を効率化、何とか販売住戸増やす

膝詰めの協議を重ねた結果、ワンルーム住戸を複数保有するオーナーは、建て替え後のタワーマンションでは面積の大きいファミリー住戸1つだけを保有することで手を打った。住戸配置の効率性が高まり、東京建物の販売住戸が増えたことで、コスト増を吸収できた。こうして2018年10月、満を持して建て替え決議を上程。賛成率約85%で可決された。

都心かつ容積率の割り増しを受けられるなど、条件に恵まれていたイトーピアでさえ、オーナーの負担をめぐって幾度もアクシデントに見舞われた。それでも、オーナー間の合意形成やデベロッパーとの交渉も理事会が主体的に行ったことが奏功したと、林さんは振り返る。

建て替え後、名称は「ブリリアタワー浜離宮」へと変わり、2023年9月に竣工となる予定だ。

週刊東洋経済10月16日号(10月11日発売)の特集は「実家のしまい方」です
一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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