安河内:斉藤先生も同じ思いをされたと思うんですけど、われわれのいた52Aクラスにも、何人かは帰国子女みたいな感じの人がいませんでしたか。
斉藤:いましたねぇ。
帰国子女と標準語の衝撃
安河内:私なんかは、そういう人たちが最初の自己紹介のときに、めちゃくちゃキレイな英語でドバーっとやった瞬間に固まっちゃったんですよ。
斉藤:凹んじゃうというかね。
安河内:舌がもう喉の奥に、くるんくるんっと詰まってしまって、自分の順番になっても英語どころか言葉も何も出てこなくなりましたよ。そういう経験されましたか。
斉藤:僕は……なんと言えばいいんでしょう。田舎で育って公立の高校に通って、上智大学を受けたんですけど。とりあえず、当時、町にひとりかふたりいるネイティブ・スピーカーを捕まえて、一緒に映画を見に行ったりだとか、そんなかんじだったんですよ。
安河内:えーっ! 高校生のときから?
斉藤:高校1年生のときから。
安河内:わお! そうですか!
斉藤:田舎だから自分で何かしないと、どうにもならない。安河内先生は福岡県出身ですよね。
安河内:私は、福岡のもうバリバリの田舎の公立高校でした。やっぱり東京に出てきたときに、東京の言葉も話せないし。英語以前のことなんですよね。
斉藤:そう、それが強いですよね! そっちのほうが英語より怖かったですよねぇ。田舎出身というのが、どこかで出て、白い目で見られるんじゃないかという……。
安河内:上智大学って良家の子女も多かったですから。
斉藤:多かった。
安河内:言葉がなまっていたりすると、不思議な顔をされたりするのが驚きというか、正直に言うとショックでしたねぇ。
斉藤:帰国子女が怖いというよりも、僕はむしろ東京の人たちが怖かったですねぇ。
安河内:確かにねぇ。
斉藤:外国語というと少しくらい発音が下手でも、なんというか、向こうの言葉だから「まぁ、いいっか」というか。逆に標準語が怖かったという感じですかね。
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