「学び直しに失敗した父親」にその後何が起きたか 自分には不必要だと思っていると痛い目にあう

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武力も暴力も、もちろんビジネスでは使いませんが、「盾」と「矛」を比喩としてビジネスパーソンのキャリア形成について考えてみましょう。

敵が鈍器を使って攻撃してくる場合、「盾」には鉄や銅など強度のある素材が求められました。しかし、こうした素材でできた堅牢な盾は重く、俊敏な動きができません。そこで研究開発によって、盾の素材も変化し続けています。例えば、現代の警察はジュラルミンやポリカーボネート製の盾を装備しています。また米軍はすでに次世代の盾を、鉄より軽くて強い素材(人工クモ糸)で作ろうとしています。  

次に「矛」、つまり実戦における武器は、技術が進歩することで鈍器が刀・槍になり、弓は鉄砲になり、近年ではドローンも使われるようになりました。砲弾がレーザー光線に取って代わる日もそう遠くはないでしょう。

ビジネスにおける「守り」と「攻め」

すなわち、技術進歩が戦い方に影響を与え、盾・矛とも相互に進化してきたのです。ビジネスにおける、守りと攻めも同じです。「盾」は、つまり「守りに不可欠な知識・スキル」です。盾がなければ、弱点を晒すことでビジネス上の競争に敗れ、降格・左遷、悪くすれば失職してしまうかもしれません。すなわち、ライバルなどからの攻撃に耐える十分な強度を持ち、弱みを克服する必要があります。

『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

「矛」は、「勝ち残りに必要な知識・スキル」です。技術革新は自分のビジネスを守る盾であり、競争相手の市場シェアを奪う矛にもなります。小売業が良い例です。ITは、在庫管理を効率化する盾であり、電子取引によって市場シェアを拡大する矛にもなります。

しかし、こうした技術の進歩だけに頼っていてはいけません。最新技術の影響力を最大化できるように、組織も再編成する必要があります。織田信長が長篠の戦で勝利した理由、プロイセンがケーニヒグレーツの戦で勝利した理由は、より性能の良い鉄砲を持っただけではなく、保有する鉄砲をうまく運用できる組織形態・作戦を開発したからです。

ビジネスにおいても、技術進歩に合う組織形態、戦略を展開できれば、有利に競争を運べるようになります。つまり、進歩した技術をうまく活用するための社員の訓練、「学び直し」が重要な経営課題なのです。

今後やってくる大失業時代、「万物流転」の時代をいかに生き抜くのか。そのためには「学び直し」が必須であると断言できます。

ロバート・フェルドマン 東京理科大学大学院教授

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Robert Feldman

1970年、アメリカから交換留学生として初来日、1年間名古屋で過ごした後、イエール大学で経済学/日本研究の学士号、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1983~89年、国際通貨基金(IMF)でエコノミスト、1990~97年、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社で首席エコノミスト。1998年、現モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社に入社、チーフエコノミストとして2017年まで勤め、その後シニアアドバイザー。2000~20年、「ワールドビジネスサテライト」にコメンテーターとして出演。書籍出版、雑誌寄稿、講演などの対外活動にも積極的。2017年より東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻にて教授を兼業。

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加藤 晃 東京理科大学大学院教授

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かとうあきら / Akira Kato

東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻教授。防衛大学校(国際関係論)卒業、青山学院大学で博士(経営管理)を取得。貿易商社、AIU保険会社、愛知産業大学を経て、2020年より現職。経済産業省ISO/TC322国内委員・日本代表エキスパート、ISO/TC207環境ファイナンス関連規格検討委員会委員、日本証券アナリスト協会サステナビリティ報告研究会委員。単著に『CFO視点で考えるリスクファイナンス』(保険毎日新聞社)、共著に『サステナブル経営と資本市場』(日本経済新聞出版社)『、ガバナンス革命の新たなロードマップ』(東洋経済新報社)

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