1995年1月17日。兵庫県・新長田駅周辺の商店街は焼け野原となった。阪神・淡路大震災の被害がとくに大きかった長田地区は、被災から5年が経過しても仮設住宅が並び、更地が多く残るなど、復興がなかなか進まなかった地域の1つだった。
失意のどん底にあったこの街において、ある1人のタクシー会社代表が、“町おこし”の仕掛け人となった。近畿タクシー代表の森崎清登(69)さんは、2000年ごろから『食』と『観光』をテーマに、新長田の商店街の復興に寄与してきた。
実に6つの商店街が連なり、300以上の店舗を構える新長田駅前。鉄人28号の大型像でも知られるこの場所は、「西部副都心」とも呼ばれる長田区に位置し、約9万4000人が居住する。人口に対してこれだけ長く、大きな商店街は初めてこの場所を訪れた人を驚かせるかもしれない。
昔はみんなバラバラだった
現在はそんなにぎわいをみせる同商店街だが、震災前の顔はまったく異なったのだ。商店街で取材を重ねるほど、「昔はみんなバラバラだった。震災前と後ではまったく違う街になった」という声も聞こえてくる。
それが、復興の過程において地域と行政、企業が協力し、観光の街へと変貌を遂げていった。その中心にいた森崎さんは、地元のソウルフードである「ぼっかけ」を用いたご当地カレー開発に携わり、ご当地グルメであった「そばめし」のような名産物へと昇華させた。こういったソフト面を作るだけにとどまらず、自ら旅行会社をまわり、全国から修学旅行の誘致、観光客を呼び込むために奔走してきたのだ。
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