
タクシー業界は苦境を脱却できるのでしょうか(写真:masy/PIXTA)
緊急事態宣言の解除後も、いまだ苦境が続くタクシー業界。コロナ禍において飲食店のような時短協力金が出ることはなく、経営者は雇用調整助成金や地方創生臨時交付金などでやり繰りしている。
許認可事業であるタクシー事業は、地方自治体とのやり取りが基本で、永田町との関係性は希薄だった。そんな中で初当選の1996年に、1期生ながら国と地方のタクシー業界を結びつけるために「タクシー・ハイヤー議員連盟(タクハイ議連)」の設立に奔走したのが、自民党の渡辺博道(71)氏だ。
渡辺氏はかつて千葉県・松戸市のタクシー会社「渡辺交通」の代表を務め、千葉県県議を経て国会の赤じゅうたんを踏んだ。当選7期のベテランで、復興大臣などを歴任している。またタクハイ議連の会長としての顔を持ち、10年以上にわたり現場でも業界の表裏を見てきた。いわば永田町でも最もタクシー事業に明るい人物ともいえるだろう。「タクシードライバーの社会的な価値を向上させたい」と訴える渡辺氏に、業界の現状、制度、法改正や未来を聞いた。
一定数の需要がある限り、稼働をゼロにはできない
――まず現在のタクシー業界が置かれた現状をどう見ていますか。
例外なく多くのタクシー会社が苦しんでおり、売り上げも5~6割程度に落ちている。

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この業界は移動してなんぼの世界で、その根幹となる移動の自粛を促すわけですから、形態として成り立っていかない。ただ、公共交通機関としての役割があり、一定数の需要がある限り稼働をゼロにできない。そこにジレンマがある。
――実際に現場のドライバーや会社からも「休めるなら休みたい」という声も多かったです。
確かに休みたいという人も多いけど、それを国がどういう形で支援するか、という問題も生まれる。この業界の肝は、労働集約型産業であるということ。従事する乗務員の生活や家族を守るために、休業手当は必要だ。
なぜならこの業界の基本は歩合制で、例えば月12勤務で36万円稼いでいた人がいたとして、それが半額になると生活できるのか。おそらく難しいでしょう。そのために雇用調整助成金をしっかりと申請して、雇用を確保すること。これが現状のコロナ禍における、一番効率的な方法でもあり、われわれからも業界には要望を出している。
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