――雇用調整助成金を含む休業補償全般についてはどうですか。
補償については難しい問題で、例えば、飲食店のような協力金とは異なり、補償の場合法律的なハードルが絡んでくる。さらにどこまでを補償するかとなると千差万別で、タクシーの場合は1000件あれば1000のケースとなる。
だから、飲食店の場合も協力金でやってきて、タクシーは協力金に近い意味合いで「地方創生臨時交付金」という形で支援してきました。名目は公共輸送という形で対応している。
雇用調整助成金については延長作業も進めています。従来の11月末でなく、もう少し延ばしていく必要性を感じている。私個人の意見では、世間のコロナに対する不安が解消されるまでが適切だと思う。
仮に助成金がなくなると、おそらくドライバーは一気にいなくなり、運営が成り立たなくなる。そうなれば大手が中小を買収してという流れがさらに加速し、大手しか残らなくなり、おのずとタクシーから地域性が消えていく。それは避けなければいけない。
地方と都心では問題の質がまったく異なる
――5月のタクシー・ハイヤー議連の総会では事業者からどんな声があったのか。
多岐にわたり、ありとあらゆる声がありました。最も感じたのは、地方と都心では問題の質がまったく異なったということ。都市部ではIT化への促進に対しての支援を求める声が多かった。
一方、地方ではバスが廃止となる地域が増えてきて、その中で最後の砦となるべきタクシーの運営自体が成り立つ要素がなくなってきていると。
国から地方自治体へ支援を促してほしいという声もあった。背景にはコロナ禍における各自治体の運輸体制の整備、補償において、かなり地域差が生まれている現実もある。地方創生臨時交付金で支援を進め、国からも各自治体に仕組みづくりの重要性を訴えてほしいというようなものでした。
――新型コロナウイルスの患者の輸送車として、自治体によればタクシーが機能している場所もある。この流れは今後の福祉や介護の現場にも通じる部分があるとも感じます。
ソーシャルサービスとしてタクシーを使うにはハードルがあって、その解決策の1つとして特措法の中で地域協議会ができた。ここには誤解があり、地域協議会はみんな国の政策だと思っているんですが、それは間違いです。あくまで地域の問題で、国はその議論を促進する立場でしかない。県単位や地域の中で考えて、国はその中で必要なことを支援する補助金を出していく。
例えば、補正予算で実施したものとしては、タクシー車内に空気清浄機を導入して車内の空気状況の「見える化」を行ったのも1つ。今はそういった仕組みづくりをしている段階です。これが国から地方へ、となると絶対にうまくいかない。タクシーの場合は“地域発信”であるべきなんです。ワクチン接種会場への輸送や、患者の方の輸送もそうで、各地域で作っている。
――ソーシャルサービスとして考えると、歩合制というのは大きくのしかかる問題でもある。
そう。だからそのあたりは民間で考える問題でなくて、公共性の中で国がどう支援していくか。仕組みづくりが必要で、次の展開を考えるうえでも欠かせない。
それは地方における医師の往診でもそうだし、高齢者の方の日々の通院、福祉や介護の現場、妊産婦の方や子供専用タクシーでも適応ができるはずです。地方自治体の中でパッケージ化して、それを特定のタクシー会社が受注するのではなく、支部を作ってまとめて受けるなど方法はいろいろ考えられる。
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