「ど田舎」の秋田・五城目町に学ぶ地方再生 カギは世界水準の教育とブランド木苺、豊かな自然

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渋澤 1年前に、経済同友会で「30年後の日本を考えるプロジェクトチーム」というのがあって、さまざまな討議を積み重ねてきた結果、「ミトコンドリアとカレーうどん」という報告書を作成しました。

「ミトコンドリアとカレーうどん」の意味

ミトコンドリアというのは、すべての細胞が内包しているといっても良い、エネルギー発生装置です。DNAを保持しつつも、環境変化に対応してきた不思議な存在などと言われているのですが、私たち日本人は、長い時間をかけて継承してきた独自の伝統、文化を持ちながら、環境変化に柔軟に対応できるDNAを持っています。

それと共に、インド由来のカレーと、中国由来のうどんを、和風だしで味付けするというカレーうどんは、異分子を上手に取り込める日本の特性でもあるということなのですが、まさに異分子をミックスさせることに、日本や、日本の地域が生き残っていく要素のひとつになります。

その意味で、私は「よそ者と若者とバカ者が世の中を変える」と思っていて、それが五城目町を変革させる大きなポイントになるのではないでしょうか。

藤野 僕が考えているキーワードは「悪ノリ」です。鳥取県の境港市にある「水木しげるロード」ってご存知ですか。ゲゲゲの鬼太郎でお馴染みのあの水木しげるさんです。今、年間400万人の観光客が訪れているのですが、今から15年前は、完全なシャッター商店街でした。本当に誰も来ない。そこで若者たちが「水木しげる先生の出身地なのだから」という理由で、商店街のいろいろなところに妖怪の銅像を建てたのが、再生のきっかけになりました。

町の老人たちは「なんだ、この気味の悪いものは」ということで大反対。ところが、そこをたまたま通ったある人が、「写メ」を撮ってブログか何かに載せたところ、これが瞬く間に、大勢の人の目に触れることになり、一気に注目度が高まりました。

そのうち、パン屋さんが「鬼太郎パン」を、酒屋さんが「ぬりかべ焼酎」を、床屋さんが「妖怪カット」を、というように、一人ひとりがどんどん悪ノリしていったのです。それが結果的に、町の活性化につながりました。さっきの渋澤さんのキーワードに当てはめると、境港市の若者がバカ者になって悪ノリした結果、よそ者がどんどん集まって町の活性化が実現したというところでしょうね。

その意味では、本来なら何かやりたいことがあるから会社を作るのだけれども、悪ノリの発想で言えば、会社を作ってから、やることを考えるというのも面白いかも知れません。

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