イェール大卒の医師が明かす「脳疲労」の正体 日本人を苦しめる「べき思考」という現代病

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また、「こうあるべきだ」という「べき思考」が、現代人の現代病のようにはびこってもいます。

われわれは安定が欲しいものですし、社会の通念があまりにも確立していて、そのレールの上を歩かなければならないという観念にとらわれてもいます。でも、その道をずっと進んでも、天井のない、そして、幸せのない一本道です。

極端な話ですが、私は、この「べき思考」さえ外れれば、うつ病などいくつかの病態はずいぶん減るのではないかと思っています。

たとえば、川があるとしましょう。底には、泥が沈殿しています。「こうあるべきだ」と日々考えている脳は、泥で水が濁っています。マインドフルネスをやると、この泥が掃除されます。すると、川底に埋もれていた自分本来の夢や願望、大事なものが見えてくるわけです。

実際にマインドフルネスをやっている人は、こういった感覚を実感されているでしょう。ただ、泥は何層にも積み重なっていて、すべてを一掃するのはなかなか難しいことでもあります。

私自身、夢をどこかに沈めて生きてきたところがあります。私が脳科学の道を選んだのは、脳という無限の可能性に興味があったからですが、特に最初の頃は、研究をやることで、川が泥で濁っていきました。

当時のやるべきことは、とにかく研究論文を書き、それをスコアの高い医学雑誌に出すということだったのです。泥の上に泥が何層も重なり、自分の本当の夢なんてどこへ、という状態にもなりました。毎日イライラしていましたし、まさに扁桃体が暴走した状態だったと思います。

しかし、マインドフルネスをやることで、はじめて、そういった感情を緩和し、消化することができたように思います。

もらうより、あげるほうが幸福

『モンク思考』の後半には、奉仕をすること、与えることなどが書かれています。非常にすばらしいと思いましたし、実際に、最後はそこにつながっていくと思います。

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